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【京都の社労士コラム】2023年9月改正!精神疾患の労災認定基準

2023年12月14日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回のテーマは、令和5年9月1日より改正された「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」についてをお送り致します。

 今年7月に公表された厚生労働省「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」報告書によると、令和4年度の精神疾患に関する労災請求件数は2,683件、労災支給決定件数は710件となっています。過去10年の推移をみても、請求件数および支給決定件数のどちらも年々増加しており、支給決定件数は、統計を開始した1983年度以降、過去最多を4年連続で更新しました。そのため、業務を原因とした精神疾患への対策が課題となります。

精神障害に係る労災補償の状況
(出典)厚生労働省『精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書』P8

 今回は、精神疾患の労災認定基準の改正に関するポイントおよび企業の対策についてご案内致します。


精神疾患とは
 精神疾患は、「心理的負荷」「個体側要因」の関係により発病するといわれています。
  • 心理的負荷:仕事やプライベートの出来事などによるストレス
  • 個体側要因:ストレスに対する個人ごとの反応のしやすさ
 つまり、同じ出来事によるストレスであっても、同時に複数発生したり、もともと本人がストレスに反応しやすい性質であるなど、以下の図の様にさまざまな要因が絡まり合い精神疾患が発病するということです。
 
(出典)厚生労働省『精神障害の労災認定


精神疾患が労災認定されるまでの流れ
 精神疾患は、業務による強いストレスが発病の要因であると判断されたときに限り労災認定されます。具体的には、以下の3つの要件すべてに該当するかで判断されます。

①認定基準の対象となる精神疾患を発病していること
 精神疾患のうち認定基準の対象となるのは、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂版(ICD-10)」の「精神及び行動の障害」に分類される疾病です。
 疾病の種類は以下の表のとおりで、業務に関連して発病する可能性のある精神疾患は、主にF2からF4に分類されるものです。


(出典)厚生労働省『精神障害の労災認定 過労死等の労災補償Ⅱ』P2

②認定基準の対象となる精神疾患の発病前おおむね6か月のあいだに、業務による強い心理的負荷が認められること
 精神疾患の発病前の6か月間に、業務上の出来事が発病に強く影響を及ぼしたと判断されることが必要です。具体的には、「業務による心理的負荷評価表」により心理的負荷の強度が「強」と評価される場合です。
 この評価は、業務による心理的負荷評価表に基づいて、心理的負荷が極度なものや極度の長時間労働など「特別な出来事」に該当する場合は「強」となります。また、「特別な出来事以外」である場合は、業務による心理的負荷評価表にある「具体的出来事」の具体例やその出来事だけでなく出来事後の状況や経緯などの事実関係をもとに総合的に判断します。
 なお、対象疾病に関与する業務による出来事が複数になる場合は、それぞれの出来事で評価を行い、総合的に判断します。
 「業務による心理的負荷評価表」は、厚生労働省の通達の別表1を参考にしてください。

参考|厚生労働省『心理的負荷による精神障害の認定基準について』別表1 業務による心理的負荷評価表

③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
【業務以外の心理的負荷の評価】
 業務以外で発病に影響を及ぼしたと考えられる出来事について、「業務以外の心理的負荷評価表」により心理的負荷の強度を確認します。「強度Ⅲ」に該当する項目がある場合、それが発病の原因という判断が妥当であるかを、慎重に判断します。
「業務以外の心理的負荷評価表」は、厚生労働省の通達の別表2を参考にしてください。

参考|厚生労働省『心理的負荷による精神障害の認定基準について』別表2 業務以外の心理的負荷評価表

【個体側要因】
 個体側要因は、ストレスに対する個人ごとの反応のしやすさや性格などによるものです。過去に精神疾患を発病していたり、アルコール依存などの状況がある場合などは、その影響も考えられるため、医学的な発病の主因であるかの妥当性も含めて慎重に判断します。


(出典)厚生労働省『精神障害の労災認定


精神疾患の労災認定基準の改正ポイント
 ここからは、改正内容について主なポイントを解説します。
  参考|厚生労働省『心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改正概要

1 業務による心理的負荷評価表に「カスタマーハラスメント」を追加
 カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)は、顧客などからの著しい迷惑行為のことです。厚生労働省が公表した企業および従業員への調査によると、過去3年間にハラスメントを受けた従業員の割合ではカスハラが2番目に多く、そして企業内での相談件数はカスハラが3番目に多いという結果となりました。
参考|令和2年度 厚生労働省委託事業『職場のハラスメントに関する実態調査

 このように、カスハラが社会問題化されている状況を受け、業務による心理的負荷評価表の具体的出来事に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」が追加されました。

2 業務による心理的負荷評価表に「感染症などの危険性が高い業務」を追加
 医療現場や介護施設など、新型コロナウイルスをはじめとした感染症に罹患する恐れが一般より高い職場では、従業員は日々相当な心理的負担を抱えながら業務に従事することになります。
 そのため、業務による心理的負荷評価表の具体的出来事に「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」が追加されました。

3 業務による心理的負荷評価表における「パワーハラスメント」の具体例を拡充
 業務による心理的負荷評価表について、パワーハラスメント(以下、パワハラ)による心理的負荷強度「強」の具体例として、以下の内容が明記されました。
  • パワハラの6類型すべて
 (人格否定発言、強い叱責、仲間外れ、過大な要求、過少な要求、プライバシー侵害)
  • 性的指向や性自認に関する精神的攻撃などを含むこと
 パワハラは、2022年度の精神疾患の労災支給決定件数のなかで一番多く、深刻な状況です。今後は、パワハラの具体例が拡充されたことにより、パワハラの労災請求がこれまで以上に適切に調査および評価され、労災認定される可能性が高まると予想されています。

4 精神疾患の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
 業務外ですでに発病していた精神疾患の悪化について、労災認定できる範囲が見直しされました。今後は、特別な出来事がない場合でも、精神疾患の悪化前に、業務による強い心理的負荷があったと医学的に判断されたときは、労災認定される可能性があります。

(出典)厚生労働省『精神障害の労災認定 過労死等の労災補償Ⅱ』P11



企業が対応すべきこと
 業務によるストレスから従業員を守り、ストレスの原因の減少に努めることは労災を防ぐことにつながります。

【業務によるストレス対策】
長時間労働の削減 長時間労働は、心身の負担が大きく、精神疾患の発病原因となる可能性が高まるため、業務の見直しや効率化、人員不足の解消などに取り組む。
ハラスメント対策及び相談体制の整備 バワーハラスメントだけではなく、各種ハラスメントの対策を行うとともに、ハラスメントなどの相談窓口を形式的に設置するのではなく、相談者が相談しやすい雰囲気づくり、相談担当者のスキルアップ、複数の相談方法(直接応対、電話、メールど)の用意など、適切な対応ができるよう体制の整備を行う。
従業員への教育、研修 ハラスメント防止に対する従業員の意識づけ、従業員への教育、研修社内ルールや相談窓口の周知、メンタルヘルス関連の情報提供、ハラスメント防止規程の整備、就業規則による行為者の懲戒処分の説明など、定期的に教育・研修を行う。
感染症等の危険性が
高い業務への対策
医療・介護・福祉などの現場では、今後も感染症等の病気や事故の危険性が高い状況は続くため、引き続き、施設内の対策や従業員への感染防止に対する意識づけを行う。

 
まとめ
 企業において従業員が安心して働くための職場環境の整備は、企業の責任とされています。業務によるストレス対策を継続的に行うともに、自社の快適な環境維持に努めましょう。

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