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【京都の社労士コラム】賞与計算の基本とポイントとは?

2023年12月07日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 12月といえば、、、冬の賞与!!
毎月の給与とは別に臨時に支給する年3回以内の賃金のことを賞与といい、一般的にはボーナスとも呼ばれるこの大イベントですが、賞与は通常の給与とは計算方法が異なり、注意すべき点も多くあるため、違いを理解することが必要です。
今回は、『賞与を支給するときに知っておきたい、基本的な計算手順やその注意点』を解説します。



賞与とは?
 そもそも『賞与』とは、給与・俸給・手当・賞与など、どのような名称であるかを問わず、労働の対償として支給するすべてのもののうち、3か月を超える期間ごとに支給する賃金です。

業種によっては、年末年始手当などの繁忙期のみに手当を支給する企業も多くありますが、支給回数によってはこちらも賞与と判断されます。


賞与計算の基本
 賞与計算の基本的な流れとしては、以下のようになります。

1 賞与の支給額を決定する

 賞与を支給できる資金(賞与の原資額)を決定します。

 賃金規程などに基づき算定基準を確認したあと、企業や従業員の業績などに応じて査定を行い、従業員ごとの支給額を決定します。


2 社会保険料を計算する

 賞与支給時に控除する社会保険料は、給与計算時と一部異なります。

 社会保険料を計算するときには、「標準賞与額」を使用します。

 標準賞与額とは、総支給額(社会保険料・税金などを控除する前)から1,000円未満の端数を切り捨てた額です。
【例】

賞与総支給額:525,500円

標準賞与額 :525,000円(※1,000円未満切り捨て)
 
 健康保険料(介護保険料含む)と厚生年金保険料は、従業員と企業が半額ずつ保険料を負担します。ここからは、従業員負担分についての計算方法を説明します。

 

【健康保険料(介護保険料含む)】 

  標準賞与額 × (健康保険料率《介護保険料率含む》÷ 2)

 標準賞与額に健康保険料率を掛けて計算します。賞与支払月に40歳以上65歳未満の従業員に対しては、賞与からも介護保険料を徴収する必要があります。

 健康保険料率(介護保険料率含む)は、加入している健康保険の種類や都道府県によって異なります。

 協会けんぽの都道府県ごとの健康保険料率・介護保険料率・厚生年金保険料率は、以下のサイトの保険料額表よりご確認ください。

参考・ダウンロード|協会けんぽ『令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)』

 

【例 大阪府の健康保険・厚生年金保険料率】


 

【厚生年金保険料】

  標準賞与額 × (厚生年金保険料率 ÷ 2)

 標準賞与額に厚生年金保険料率(現在は18.3%)を掛けて計算します。

 被保険者負担分の端数処理は、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料とも、原則50銭以下は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げです。ただし、労使間でこれまで慣習的な取扱いなど特約がある場合は、すべて切り捨ててしまっても差し支えありません。

【例】

50銭以下の場合:15,300.50円 ⇒ 15,300円を控除

50銭超えの場合:15,300.51円 ⇒ 15,301円を控除
 

【雇用保険料】

  賞与支給額 × 雇用保険料率

 雇用保険料については、賞与支給額に雇用保険料率を掛けて求めます。雇用保険料率は、通常の給与支給時と同じものになります。

 

3 所得税の計算をする

  (賞与支給額-健康保険料-介護保険料-厚生年金保険料-雇用保険料)×源泉徴収税率

 源泉徴収税率は、「前月の給与の総支給額から社会保険料を差し引いた金額」と「扶養人数」によって決まるため、人によって異なります。

 源泉徴収税率は、国税庁のホームページに掲載されていますので、ご確認ください。

参考・ダウンロード|国税庁『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和5年分)』

【例】
   

①「前月の給与の総支給額-社会保険料」を求める

340,000円-53,737円=286,263円

 
②扶養人数と①の金額を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」にあてはめ、源泉徴収率を求める

 扶養人数2人で①の金額が「286,263円」の場合、269,000円~312,000円未満の行に該当

⇒源泉徴収税率は4.084%




③賞与の総支給額から社会保険料等を差し引いた額に、②で求めた源泉所得税率をかける

(732,500円-44,323円-66,978円-4,395円)×4.084%=25,190円(所得税)

 算出した所得税に小数点以下の端数が出た場合は、1円未満の端数を切り捨てます。



賞与計算時の注意点
 賞与計算時の注意点と対応についてご紹介します。

1 退職予定者・退職者がいる場合の社会保険料の取扱い

 退職を予定している従業員や、すでに退職している従業員に賞与を支払う場合、退職日や支給日によっては社会保険料を徴収しないことがあります。

 企業が賞与から社会保険料を徴収する必要があるのは、従業員の資格喪失日(退職日の翌日)の属する月の前月までです。

 退職が月末の場合、資格喪失日は翌月1日となり、退職日以前に支給される賞与からは社会保険料を徴収します。退職が月末以外の場合、退職月に支給される賞与からの社会保険料の徴収は不要です。
【例1 賞与支給日:12月10日 退職日:12月20日】

 資格喪失日が12月21日になるため、12月10日に支払われる賞与から社会保険料を徴収しない

【例2 賞与支給日:8月5日 退職日:8月31日】

 資格喪失日が9月1日になるため、8月5日に支払われる賞与から社会保険料を徴収する

 資格喪失日までに支払われた賞与については、支給日から5日以内に賞与支払届を届出してください。

 雇用保険料は、退職のタイミングにかかわらず、退職予定者や賞与支払時点で退職している従業員からも徴収をします。

 

2 産前産後休業・育児休業中の従業員に賞与を支払う場合

 産前産後休業・育児休業中に賞与を支給するときでも、社会保険料は免除の対象となります。

 なお、2022年10月1日以降に開始した育児休業等については、賞与を支払った月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業を取得した場合、賞与の社会保険料が免除になります。1か月を超えるかどうかは暦日で判断し、土日などの休日も期間に含みます。

【例】

参考|日本年金機構『育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます。』



3 賞与を年4回以上支給する場合

 年4回以上賞与を支給する場合は、賞与ではなく報酬として扱われるため、
標準報酬月額の対象になります。


通常の賃金と合わせて社会保険料を計算しなければならないため、
随時改定(月額変更)定時決定(算定基礎)のときは注意が必要です。


 

4 社会保険料計算時の賞与額の上限の確認

 社会保険料がかかる賞与の上限額は法令等で定められています。

【健康保険:4月1日~翌年3月31日までの賞与の累計額573万まで】
<例 8月 200万円、12月 300万円、3月 100万円の賞与を支給する場合>

8月 200万円+12月 300万円+3月 100万円=600万円

→600万円ー573万円(上限額)=27万円

 

 累計573万円を超えているため3月支給分のうち27万円には、健康保険料はかかりません。


【厚生年金保険:1か月の賞与額150万円まで】
<例 8月 200万円、12月 300万円、3月 100万円の賞与を支給する場合>

①8月200万円-上限額150万円=50万円

②12月300万円ー上限額150万円=150万円

 8月、12月は上限額150万円を超えているため、①50万円分、②150万円分には厚生年金保険料はかかりません。

 賞与支払届については、社会保険料計算時の賞与額の上限を超えていても、支払った金額で届出をしてください。



5 「前月の給与がない」または「前月給与の10倍を超える」場合

 賞与から徴収する所得税の計算では、産前休業に入った従業員に賞与を支給するときのように「前月の給与がない」場合や、ケガや病気により欠勤が多かったことから前月給与が少ない従業員に賞与を支給するときなど、賞与の総支給額が「前月給与の10倍を超える場合」は、法令等に定められた通常とは異なる方法により、所得税の計算を行わなければなりません。

以下のサイトを参考に、正しい所得税の計算を行ってください。

参考|国税庁『賞与に対する源泉徴収』


まとめ
賞与は毎月の給与と違い支給回数が限られており少ない為、計算時に基本の流れや注意点を確認しながら進めることができれば、難しくはありません。とはいっても、ややこしい年末の仕事で追われていて、そこまで手が回らない」そんな方もおられるかと思いますが、現在では給与計算ソフトなどで処理を進めることもできます。又、従業員から質問が来たときにスムーズな回答ができるよう、基本の流れについて改めて確認されることをおすすめします。

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