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【京都の社労士コラム】お客様は神様…じゃない⁉「カスハラ」に注意

2023年11月30日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

近年、顧客からのハラスメントである「カスタマーハラスメント」の問題
深刻化しており、無視できない問題となっております。

2023年9月1日に、カスタマーハラスメントが
新たに精神障害の労災認定基準に追加され
2023年12月からは、旅館やホテルがカスタマーハラスメントを繰り返す客の宿泊を拒否することが可能になるよう旅館業法が改正されるなど
国も対策を行っています。

そこで今回は、社会問題となっているカスタマーハラスメントに焦点を当て、「カスタマーハラスメント対策の必要性
「企業が取り組むべきカスタマーハラスメント対策」について
ご案内いたします。

カスタマーハラスメントとは

そもそもカスタマーハラスメントとはどのようなものを指すのでしょうか。

 厚生労働省によると、カスタマーハラスメントとは以下のものを指します。
 ⇩⇩⇩
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の
妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・様態が
社会通念上
不相当なものであって、当該手段・態様により、
労働者の就業環境が
害されるもの

「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例
企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合

✅要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは
  関係がない場合


「要求を実現するための手段・様態が社会通念上不相当な言動」の例
要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの

・身体的な攻撃(暴行、傷害)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・継続的(繰り返し)、執拗な(しつこい)言動
・拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃・要求 

要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの

・商品交換の要求
・金銭補償の要求
・謝罪の要求(土下座を除く)

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策リーフレット

カスタマーハラスメントの発生状況

カスタマーハラスメントの発生件数が現在増加傾向にあります。

日本労働組合総連合会(連合)が2022年12月に発表した
「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」の結果によると、
「直近5年でカスハラの発生件数が増えた」とする回答は、
全体の36.9%に上っています。


発生しているカスタマーハラスメントの実態についての調査では、
直近3年間で従業員が受けたことのあるカスタマーハラスメントとして、
最も多いものは「暴言(55.3%)」
2番目に多いものは「説教など、権威的な態度(46.7%)」となりました。

従業員が受けたカスタマー・ハラスメントのきっかけについては、
「商品・サービス提供への不満(40.4%)」
「勘違いや嫌がらせ(47.4%)」が大半を占めていました。

また、カスタマーハラスメントの対策に関する調査から
以下のことがわかりました。

対策が1つでも取れている職場では、
カスタマーハラスメント対策が全く取られていない職場に比べ、

従業員がカスタマーハラスメントに対して
対応できている。(下記資料参考)



引用:日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022


しかし、調査結果から未だにカスタマーハラスメント対策を行っていない
企業が多くみられることが確認できます。

Point
はたして、企業にとってカスタマーハラスメント対策に取り組むことは
必要なことなのでしょうか。

以下で解説します。

参考:日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022

カスタマーハラスメント対策の必要性

 厚生労働省が告示している
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」では、以下のように定められています。

⇩ ⇩ ⇩

事業主は顧客等からの著しい迷惑行為によって雇用する労働者の就業環境が害されないよう、相談対応体制や被害者への配慮のための取組を行うことが望ましく、また、被害防止のための取組を行うことが有効である。

カスタマーハラスメント等防止のために行うことが望ましい取組
相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

被害者への配慮のための取組

・被害者のメンタルヘルス不調への相談対応
・著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に
 1人で対応させない等の取組

他の事業主が雇用する労働者等からの著しい迷惑行為による
 被害を防止するための取組

・マニュアルの作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組

上記の取組を行わず、企業で従業員がカスタマ―ハラスメント被害にあった場合、企業は安全配慮義務を怠っているとみなされ、
違反になる可能性があるため注意が必要です。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

【判決から見る】カスタマーハラスメント対策の必要性

 ここでは、コールセンター従業員が顧客等から受けたカスタマーハラスメントに対して、企業が十分な対応をしなかったとして企業を訴えた事案から、
カスタマーハラスメント対策の必要性を解説します。


【裁判のポイント】
 ⇩ ⇩ ⇩
①原告の女性は、コールセンターに勤務しており、
 視聴者からの問い合わせと称した年間100件以上の暴言や
 わいせつ電話を受ける

②原告は、使用者である企業は以下の義務を負っていたのにも
 かかわらず、これらを怠ったとして、安全配慮義務違反が存在すると主張

・わいせつ発言や暴言、著しく不当な要求を繰り返す視聴者に対して
 現場のコミュニケーターに電話を受けさせないようにする義務

・わいせつ発言や言動、著しく不当な要求を繰り返す視聴者に対して
 刑事・民事等の法的措置をとる義務

③企業は、カスタマーハラスメント対策として、CLやSVは、それぞれが
 担当するコミュニケーターの通話を順次モニタリングし、わいせつ電話は
 もとより、コミュニケーターの対応が困難になりそうな入電がないか常に
 チェックするなどの取組を行っていた。


【裁判所の判断】
 ⇩ ⇩ ⇩
裁判所は、わいせつ発言や暴言、著しく不当な要求か
ら従業員の心身の安全を確保するためのルールを策定
したうえ、これに沿って対処していたと企業の責任を否定
           横浜地裁川崎支部令和3年11月30日判決


この事例では、訴えられた企業が適切なカスタマーハラスメントの対策を行っていたことにより、企業は安全配慮義務違反となりませんでした。

カスタマーハラスメントが起きやすい業種では、「カスタマーハラスメントは我慢するもの」として捉え、対策を行わないケースがありますが、

企業にはカスタマーハラスメント対策を検討する義務があり対策を怠ると違反に繋がる可能性があることをきちんと認識する必要があります。

参考:横浜地裁川崎支部判決令和3年11月30日

カスタマーハラスメント対策の基本的な枠組み

企業が取り組むことができるカスタマーハラスメント対策は、
従業員・顧客への周知と、事実・証拠に基づいた対応がカギとなっております。

ここでは、カスタマーハラスメントの各段階における対策を紹介します。

①カスタマーハラスメントを想定した事前の準備

②カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応

③カスタマーハラスメントに発展させないための、初期段階の防止策


①カスタマーハラスメントを想定した事前の準備

事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周囲・啓発
✅トップが基本方針・基本姿勢を明確に示す。

✅基本方針・基本姿勢、従業員の対応の在り方を従業員に
     周知・啓発し、教育する。

     →基本方針を店内にポスターとして張り出し、
      顧客へ周知することも有効!

従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
✅相談対応者を決めておく、または相談窓口を設置し、
 従業員に広く周知する

✅相談対応者が相談の内容や状況に応じ適切に対応できるようにする。

対応方法、手段の策定
✅カスタマーハラスメント行為への対応体制、方法等を
  あらかじめ決めておく。

社内対応ルールの従業員等への教育・研修
✅具体的な社内対応ルールについて、従業員研修等を実施する。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策リーフレット

②カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応

事実関係の正確な確認と事案への対応
✅顧客、従業員等からの情報を基に、その行為が事実であるかを
  確かな証拠・証言に基づいて確認する。

✅過失がある場合は謝罪し、交換・返金に応じる。
  ない場合は要求等に応じない。

従業員(被害者)への配慮の措置
✅被害を受けた被害者に対する配慮の措置
   (組織的な対応やメンタル不調への対応等)を適切に行う。

再発防止のための取組
✅定期的な取組の見直しや改善を行い、継続的に取組を行う。

併せて講ずべき措置
✅相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、
 従業員に周知する。

✅相談したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を
 定め、従業員に周知する。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策リーフレット

③カスタマーハラスメントに発展させないための、
 初期段階の防止策

初期段階での適切な対応が、カスタマーハラスメントを防ぎます。
カスタマーハラスメントを発展させないための3ステップをご紹介します。

【STEP1】対象を明確にして謝罪する
✅対象を明確にした上で(例:不快感を抱かせたことに対して)限定的 
 に謝罪する

✅正確に状況が把握できていない段階では、非を認めた発言はせず、
  事実確認をして社内で判断をしたときに、過失の程度に応じた
  謝罪をする


【STEP2】状況を正確に把握する
✅顧客等が主張する内容を正確に把握する。反論はせずまずはひと通り
     事情を確認する。

✅不明確な点や不足情報があれば追加で確認し、勘違いがあれば正しい 
     情報を提供する。


【STEP3】現場監督者(一次相談対応者)または相談窓口に情報共有する
✅顧客等から確認した情報は、現場監督者または相談窓口対応者に
  共有する。

✅正確かつ迅速に状況を把握するため、現場対応者はできるだけ、
  事実関係を時系列で整理して報告する。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策リーフレット

まとめ
 
 カスタマーハラスメントは、従業員に過度な精神的ストレスを感じさせるとともに、通常の業務に支障が出るケースもみられるなど、企業や組織に
金銭、時間、精神的苦痛等、多大な損失を招くことが想定されます。

そのため、企業は、相談窓口の設置マニュアルの作成研修の実施など
カスタマーハラスメントから従業員を守る対応に取り組み、
従業員が安心して働くことができる職場づくりを目指しましょう。
 
 A社会保険労務士法人では、ハラスメント相談窓口の規定なども含めた就業規則の作成・改定、採用支援、企業年金の導入支援、法改正に対応した労務相談、労使協定の締結、各種助成金の申請支援などを行っています。
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