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【京都の社労士コラム】2022年10月から社会保険適用範囲が拡大。対象事業所は早めの準備を!

2022年06月09日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

本日は、2022年10月1日から改正される『社会保険の適用拡大に関する取扱い』についてのご案内です。

これまで従業員数500人を超える企業で、1年以上の雇用見込みがある場合は短時間労働者でも要件を満たせば社会保険が適用されてきました。2022年の10月からは従業員数100人を超える企業、更に2024年10月からは従業員数50人を超える企業も短時間労働者について社会保険の適用が拡大されます。

今回は、2022年10月1日からの改正のポイントと対象となる企業や労働者、取り組むべきことを解説いたします。

社会保険の適用拡大とは

社会保険の加入者は法令で定められています。フルタイムの従業員(正社員など)と、フルタイムの従業員とを比べて週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が3/4以上のパート・アルバイトなどです。一般被保険者といいます。

社会保険の適用拡大とは、社会保険に加入する対象範囲が企業の従業員数によって段階的に拡大することです。対象となる企業は「特定適用事業所」といいます。 現在、特定適用事業所は、従業員数500人を超える企業が対象となっています。  

また、特定適用事業所の従業員のうち、一般被保険者にならない短時間労働者で以下の4つの要件を満たす方が社会保険に加入することになります。

【短時間労働者の社会保険の加入要件】
 1 週の所定労働時間が20時間以上
 2 月額賃金が88,000円以上
 3 雇用契約期間が継続して1年以上見込みがある
 4 学生ではない(休学中または夜学生は除く)
                     
なぜ社会保険の適用拡大を進める必要があるのか

 これまでも法律改正により、短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大の取組が進められてきました。その意義については、以下の点があるとされています。

出典:厚生労働省『被用者保険の適用拡大を進めるにあたっての基本的な考え方

2022年10月以降、社会保険適用拡大の改正点

2022年10月1日以降、特定適用事業所の企業の人数要件と短時間労働者の4つの加入要件のうち、雇用契約期間の要件が変わります。 

【特定適用事業所の企業の人数要件】
現 在:従業員数500人を超える企業
改正後:従業員数100人を超える企業

※2022年10月1日以降は、従業員数100人を超える企業が「特定適用事業所」となります。

【雇用契約期間の要件】
現 在:雇用契約期間が継続して1年以上見込みがあること
改正後:「雇用契約期間が継続して1年以上見込みがあること」が廃止、
    2か月を超える雇用の見込みがあること

以下の特定適用事業所の企業の人数要件に該当し、短時間労働者の加入要件に該当するときは、社会保険に加入することになります。

出典:日本年金機構『令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大』

従業員数100人を超える企業とは

従業員数100人を超える企業とは、厚生年金の被保険者の総数が100人を超えることが見込まれる状態をいいます。2022年10月からの社会保険の適用拡大に関するQ&Aでは、以下のように回答されています。

~Q&A 問8より~

Q: 「被保険者の総数が常時100人を超える」とは、どのような状態を指すのか。どの時点で常時100人を超えると判断することになるのか。

A:「被保険者の総数が常時100人を超える」とは、
法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上100人を超えることが見込まれる場合を指します
個人事業所の場合は、適用事業所ごとに使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上100人を超えることが見込まれる場合を指します。

従業員数100人超えに該当する企業と該当する可能性のある企業は、2022年8月頃、日本年金機構からお知らせが届きます。

特定適用事業所に該当する可能性がある会社において、特定適用事業所に該当した場合は「特定適用事業所該当届」の提出が必要となります。但し、令和4年8月の厚生年金被保険者の総数が100人を超えたことが確認できた場合は「特定適用事業所該当届」の提出が不要となります。
適用拡大に伴い、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合は「被保険者資格取得届」の提出が必要となります。(令和4年10月以降)


出典:厚生労働省『短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和4年10月施行分)』


パート・アルバイトの所定労働時間が変更になったとき

特定適用事業所におけるパート・アルバイトの所定労働時間が変更になったときは、その状況に応じて社会保険資格取得届の届出または被保険者区分変更届の届出を日本年金機構に行う必要があります。  

(例)所定労働時間が20時間未満の従業員が20時間以上(短時間労働者)になった場合

 →社会保険資格取得届の届出

(例)所定労働時間が20時間の従業員が30時間(一般被保険者)になった場合
 →被保険者区分変更届の届出:「短時間」→「一般」に区分を変更

(例)所定労働時間が30時間の従業員が20時間(短時間労働者)になった場合
 →被保険者区分変更届の届出:「一般」→「短時間」に区分を変更

※新たに資格取得する場合は「社会保険資格取得届」、被保険者の区分が変更になる場合は「被保険者区分変更届」の届出が必要となります。

参考・ダウンロード|健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届
参考・ダウンロード|被保険者区分変更届・70歳以上被用者区分変更届

その他、2022年10月からの社会保険の適用拡大に関するQ&Aでは、以下のような取扱いについても回答をしています。

~Q&A 問32より~

Q: 就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週20時間未満である者が、業務の都合等により恒常的に実際の労働時間が週20時間以上となった場合は、どのように取り扱うのか。

A:実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。

従業員数に関係なく、2か月を超える見込みのある従業員も社会保険の加入が必要

2022年10月、社会保険の適用拡大とともに、厚生年金保険の適用除外要件が見直しになります。法令等では、日々雇用される者と以下の従業員は社会保険の適用の対象とはなっていません。  
 
改正前(2022年9月30日まで):2か月を超えて雇用されない者  
改正後(2022年10月1日以降):2か月を超えて雇用される見込みがない者  
 
つまり、有期契約労働者の雇用契約書に「更新する場合がある」などの明示があるときは、2か月を超えて雇用が見込まれると判断され、最初の2か月の雇用契約期間を含めて社会保険に加入しなければならなくなります。

出典:厚生労働省年金局『その他の制度改正事項及び業務運営改善事項について』

施行期日前の適用拡大で活用できる支援制度

施行期日の2022年10月1日までに社会保険の適用拡大を行う事で、活用できる支援制度があります。
 
【助成金】
 〇 キャリアアップ助成金
   ・短時間労働者時間延長コース
   ・選択的適用拡大導入時処遇改善コース
   ・正社員化コース
出典:厚生労働省『キャリアアップ助成金

【補助金】
 〇 中小企業生産性革命推進事業
   ・ものづくり補助金
   ・持続化補助金
   ・IT導入補助金
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構 HP

最後に企業がすべき対応

法改正に伴い、自社が「特定適用事業所」該当するかをご確認ください。
該当する場合は、パート・アルバイトなどの短時間労働者でも社会保険の適用になる方を把握し、対象者本人に社会保険に加入しなければならなくなる旨を説明し、働き方や勤務時間などの労働条件について話し合いを進めることが大切です。今の段階から早めに周知を行い、対応することで従業員の理解にもつながります。必要に応じて雇用契約書の変更など準備を進めてください。

社会保険の適用拡大に伴い、企業の社会保険料負担も増えることになります。対象者の把握と併せて保険料も確認し、従業員の採用計画の見直しが必要かもしれません。
社会保険の適用拡大については、2024年10月に従業員50人を超える企業も対象になります。今後、企業の増員をしていく際には、社会保険の適用拡大も意識した上で働き方の管理や採用を検討していくことをおすすめします。

当法人では労務相談、助成金の活用や就業規則の整備、勤怠管理システムなどのDX化支援等も行っております。

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