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【京都の社労士コラム】ドライバーの労働時間等の改善基準の改定 ‼

2024年02月01日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回は、2024年4月1日よりドライバーの労働時間等の改善基準の改正にあたり
    「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
                      についてご案内します。

 4月の法改正でトラック・バス・タクシーなどの自動車運転者(以下、ドライバー)の時間外労働の上限規制が適用されることを踏まえての見直しとなります。

 ドライバーを雇用する企業は働き方の見直しをはじめ、人手不足などさまざまな問題に直面しており、物流・運送業の状況は「2024年問題」とも呼ばれ、深刻な状況に追い込まれています。

 今回の改正はドライバーを雇用する企業以外でも、多くの企業に影響をおよぼす可能性があるため、すべての企業が自分事として対応に取り組むことが求められます。この改善基準告示の改正内容と、物流・運送業をはじめとしたドライバーを雇用する企業およびそれ以外の企業がそれぞれ取り組むべき対応について解説します。

改善基準告示とは

 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、改善基準告示)は、ドライバーの労働条件をより良くするため、拘束時間の上限休息時間など労働時間等の基準を定めたものです。ドライバーの長時間労働を防ぐことは、ドライバー自身の健康確保はもちろんのこと、交通事故の予防など国民の安全確保の観点からも大切です。

対象業種
  物流・運動業に限らず、ドライバーを雇用するすべての事業に適用

対象者
  物や人を運搬するため、自動車を運転する時間が労働時間の半分を超え
  ることが見込まれる従業員が対象
(例)
  トラック運転者:工場など製造業における配達部門のドライバー
    バス運転者:旅館の送迎用のバスやスクールバスのドライバー

 注意点として、企業の役員や個人事業主(以下、個人事業主等)は改善基準告示の対象ではありませんが、道路運送法などの法令等では、ドライバーの過労死防止等の観点からドライバーの労働時間等についての規定があり、その基準として改善基準告示が引用されています。この規定はドライバーが個人事業主等である場合も適用されるため、実質的に改善基準告示に留意する必要があります。

ドライバーの労働時間等の定義

 ドライバーは、目的地によっては長時間拘束されたり、荷主等の都合による待機時間(以下、荷待ち時間)や仮眠時間などがあるなど、一般的な労働時間とは異なる時間も発生します。

ドライバーの労働時間等の定義
①拘束時間
 始業から終業までの、企業に拘束される時間(労働時間+休憩時間)

✅労働時間:運転や整備、発送準備などの作業時間(荷待ち時間も含む)
✅休憩時間:労働時間の合間でドライバーや運行管理者が自己判断で身体を
       休める時間(食事や仮眠時間も含む)

(出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P.3

②休息時間
 業務から解放され、次の業務まで完全に自由に過ごすことができる時間
              (睡眠時間を含む、ドライバーの生活時間)

③運転時間
 労働時間のうち、ドライバーが運転している時間
トラックおよびバスの運転者の1日、1週の運転時間を算定する考え方
✅1日:2日を平均した1日あたりの時間
✅1週:2週間(バスは、4週間)を平均した1週あたりの時間

④休日
 ドライバーの休日の取扱いは、「休息時間+24時間」の連続した時間
              (休日は、30時間を下回ることはできない)

【トラック運転者】改正後のポイント

 物流・運送業では、トラック運転者の人手不足が深刻化しています。インターネットの通信販売の利用者増加による宅配の取扱い個数の増加や再配達の増加、当日配達サービスなどサービスの高度化により、配達ドライバーが長時間労働をせざるを得ない状況も一因です。

改正後の改善基準告示
①拘束時間
✅ 1年:原則 3,300時間以内(※1)
✅1か月:原則    284時間以内(※1)
✅ 1日:原則         13時間以内(上限15時間)(※2・※3)

※1:労使協定により、年間3,400時間、1か月310時間まで延長可
  (ただし、1年のうち6か月まで、かつ284時間超は連続3か月まで)
※2:14時間を超える回数をできる限り少なく(週2回までが目安)
※3:長距離の貨物運送で宿泊を伴う場合、週2回に限り上限16時間まで延長
    可能の場合あり

 なお、1か月の時間外労働および休日労働の合計時間数が、100時間未満となるよう努める必要があります。
      
      
(出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P.4

②休息時間
 基本的に継続11時間以上与えるよう努め、継続9時間を下回ってはいけません。ただし、長距離の貨物運送で宿泊を伴うう場合、週2回に限り継続8時間以上でも可能な場合があります。
    (継続9時間未満になった後は、継続12時間以上の休息期間が必要)

(出典)厚生労働省『トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント』P.7

③運転時間
 運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内、2週平均で1週あたり44時間以内です。また、連続する運転時間は4時間以内とします。4時間を超えるまでに、1回がおおむね10分以上かつ合計30分以上の休憩が必要です。

④時間外労働および休日労働
 時間外労働や休日労働により、①の拘束時間を超えてはいけません。また、休日労働は2週間に1回までです。

⑤予期し得ない事態が発生したとき
 災害や事故など予測不能な事態により運行が遅延したとき、拘束時間運転時間からその対応時間を除くことができます。

※その他、厚生労働省のリーフレットも参考ください。
(参考)厚生労働省『トラック運転者の改善基準告示が改正されます!


【バス運転者】改正後のポイント

 バス運転者もトラック運転者同様に不足しています。このような状況でも路線バスなどが日々のダイヤに合わせた人員配置をするためには、運転者に長時間労働を強いることとなり、その結果さらに人手不足を招くという悪循環となっています。

改正後の改善基準告示
①拘束時間、休息時間
 労務管理などの実態に応じて、拘束時間は「1年1か月」「52週4週 平均1週(※)」いずれかの基準を選択します。
※4週間を平均した1週あたりの時間

(出典)厚生労働省『バス運転者の改善基準告示が改正されます!』P.2

②運転時間
 運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内、4週平均で1週あたり40時間以内です。また、連続する運転時間は4時間以内とします。4時間を超えるまでに1回がおおむね10分以上かつ合計30分以上の休憩が必要です。

③時間外労働および休日労働
 時間外労働や休日労働により、①の拘束時間を超えてはいけません。また、休日労働は2週間に1回までです。
 
※その他、厚生労働省のリーフレットも参考ください。 
(参考)厚生労働省『バス運転者の改善基準告示が改正されます!

【タクシー・ハイヤー運転者】改正後のポイント

1. タクシー運転者
 タクシー運転者には、以下のような勤務形態があります。
✅日勤勤務:1日の所定労働時間が8時間など一般的な勤務形態です。昼日勤や
       夜日勤があります。
✅隔日勤務:2日間を1単位とした勤務形態です。1回の乗務が長時間であるため
       1日おきに勤務します。

改正後の改善基準告示
①拘束時間、休息時間

(出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P.2

②車庫待ち等
 「車庫待ち等」は、車庫で待機し、顧客からの呼び出しに応じて出庫する営業形態です。このうち、一定の要件を満たす場合は「車庫待ち等の自動車運転者」として、以下の拘束時間が適用されます。

(出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P.2

2. ハイヤー運転者
 ハイヤーは、完全予約制で運転手付きの貸切乗用車です。要人や役員などの移動手段に利用されることも多く、上質なサービスが提供されます。勤務形態がタクシー運転者とは異なるため、タクシー運転手の拘束時間や休息期間などの基準は適用されず、以下のように定められています。

(出典)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!』P.2

※その他、厚生労働省のリーフレットも参考ください。 
(参考)厚生労働省『タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示が改正されます!

  ドライバーを雇用する企業が対応すべきこと

1. 36協定届の様式変更
 36協定の対象者にドライバーを含む場合、2024年4月より36協定届の様式が変わります。
✅一般条項のみ:様式第9号の3の4
✅特別条項あり:様式第9号の3の5(ドライバーの上限は年960時間以内、それ
         以外の業務は年720時間以内)

(出典)静岡労働局『自動車運転者についても、時間外労働の上限規制が適用されます』P.1

 なお、対象者にドライバーを含まない場合、物流・運送業であっても36協定届は様式第9号(一般条項のみ)または様式第9号の2(特別条項あり)となります。様式は、以下のサイトからダウンロードできます。
(参考・ダウンロード)
 厚生労働省『主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)


2. 業務効率化のためのシステム導入
 配車計画システム、ドライバーの勤務形態に対応できる労務管理システムなどの導入により、時間コストの削減や人的ミスの防止を図ります。

3. 配送形態の見直しなど長時間労働対策
 1人のドライバーによる長距離運送は、長時間労働の一因につながります。複数のドライバーがリレー方式で運送するなどの体制の見直しは、従業員の負担軽減に有効です。

 また、健康診断だけでなく、気軽に利用できる相談窓口の設置や日頃の声かけなど、ドライバーの心身の健康状態の把握に努めることも大切です。

 ドライバーが自身の疲労状態を自覚するための「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」などの活用もおすすめします。
(参考・ダウンロード)
 厚生労働省『労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)


4. ドライバーの人材確保
 ドライバーは、長時間労働や休日の少なさなどから若年層に敬遠される傾向にあり、人手不足および高齢化に拍車をかけています。給与体系の見直しや有給休暇を取得しやすい職場環境づくり福利厚生の充実などを行い、人材確保に努めることが必要です。

 また、時短勤務など働き方の多様化を進めることは、女性や副業を希望する方などの新たな層の採用にもつながる可能性があります。

5. 荷主への協力要請
 ドライバーの長時間労働の問題は、物流・運送業者である企業の努力だけでは対処しきれないこともあります。荷主と協力しながら取引環境の改善に向けた取り組みが必要です。


  荷主企業への影響、協力できること

 「2024年問題」の影響は物流・運送業者だけに限るものではありません。多くの企業が、荷主として荷物の配送依頼をしたり(発荷主)、荷物を受け取ったり(着荷主)しています。今後、荷主への影響として「指定した日時に荷物が届かない」「配送を断られる」など、これまでにない状況が発生する可能性も考えられます。

 こうした懸念への対策には荷主の協力が欠かせません。ドライバーの労働時間の削減や労働環境の改善は、サービス向上にもつながり、荷主にもメリットをもたらします。

 物流・運送業者と連携しながら2024年問題に取り組むことが大切です。

 
 なお、長時間の荷待ちがいつまでも改善されない状況が続くなど改善基準告示の違反を疑われる場合、労働基準監督署から荷主等に対して「要請」が行われる可能性があります。

(出典)厚生労働省『トラックドライバーの新しい労働時間規制が始まります!』P.4

まとめ

 改善基準告示の違反による罰則はないものの、労働基準監督署の指導を受けたり、状況によっては国土交通省の行政処分を受ける可能性があります。

 ドライバーを雇用する企業だけでなく、荷主企業も含めたあらゆる企業が自社ですべきことを検討し早急に取り組むことが求められています。

 また、今回の改正に則って労働時間を管理することは、より安全性の高い企業の証とも言えます。「デジタルタコメーターがあるから何とかなる」と安易に考えず、ドライバーの働き方や労務担当者の管理面を考慮して、クラウドサービスの勤怠管理システムを活用し、新しい改善基準告示にもしっかり対応できる体制を整えましょう。


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