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【京都の社労士コラム】≪健康診断のタイミング!≫ 業種に合わせた頻度とは??

2023年11月16日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 本日は『健康診断のタイミングについて』をご案内します。
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成する目的で制定された法律です。
労働安全衛生法は、昭和47年(1972年)に制定されました。
 第二次世界大戦終戦後の昭和22年、新憲法を制定する際に「労働基準法」第5章(第42条〜55条)に労働安全衛生関連の法令が14条分盛り込まれたのが始まりです。

その後、生産技術の革新で労働環境が大きく変化したことで、毎年6,000人を超える労働災害が発生し、社会問題になりました。

こうした一連の流れを受け、1969年から労働安全衛生関連の法令を整備し、労働基準法から独立・分離する形で1972年に労働安全衛生法成立しました。

労働安全衛生法のうち、健康診断について記載されているのは第7章「健康の保持増進のための措置」の第66条です。


■労働安全衛生法第66条
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。
また、この条項では、健康診断を実施する義務が規定されています。規定された健康診断は大きく分けると2種類あり、一般健康診断と特殊健康診断です。



【動画】 健康診断のタイミング!
  動画は「画像」をクリックすれば再生されます





一般健康診断とは

事業主が労働者に対して実施することが法律(労働安全衛生規則)により義務づけられている健康診断の事です。


【一般健康診断に含まれる主な5つの健康診断】
①定期健康診断        労働安全衛生規則第44条
②雇入れ時の健康診断     労働安全衛生規則第43条
③特定業務従事者の健康診断  労働安全衛生規則第45条
④海外派遣労働者の健康診断  労働安全衛生規則第45条の2
⑤給食従業員の検便      労働安全衛生規則第47条



定期健康診断

定期健康診断を規定する法律は、労働安全衛生規則第44条です。


■労働安全衛生規則第44条
事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない
(※)第45条第1項に規定する労働者:特定業務従事者

1.既往歴および業務歴の調査
2.自覚症状および他覚症状の有無の検査
3.身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
4.胸部エックス線検査および喀痰検査
5.血圧の測定
6.貧血検査(血色素量および赤血球数)
7.肝機能検査(GOT、GPTおよびγ-GT(γ-GTP)の検査)
8.血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9.血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c、やむを得ない場合は随時血糖(食後3.5時間以上経過))
10.尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
11.心電図検査
 


また、2項〜4項を設け、医師の判断で省略できる項目や、1年以内に受けた健康診断の項目は省略できることについて補足ですが、医師の判断で省略可能な項目は、以下の7つです。


【省略可能な項目】

・身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
・胸部エックス線検査および喀痰検査
・貧血検査(血色素量および赤血球数)
・肝機能検査(GOT、GPT、γ-GT(γ-GTP))
・血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
・血糖検査
・心電図検査



雇入れ時の健康診断

雇入れ時の健康診断を規定する法律は、労働安全衛生規則第43条です。


■労働安全衛生規則第43条
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない
ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

1.既往歴および業務歴の調査
2.自覚症状および他覚症状の有無の検査
3.身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
4.胸部エックス線検査
5.血圧の測定
6.貧血検査(血色素量および赤血球数)
7.肝機能検査(GOT、GPTおよびγ-GT(γ-GTP)の検査)
8.血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9.血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c、やむを得ない場合は随時血糖(食後3.5時間以上経過))
10.尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
11.心電図検査


雇入れ時の健康診断は、
入社前3ヶ月以内に同じ項目の健康診断を受診している場合は、当該健康診断の結果を証明する書類(健康診断書、健康診断証明書)を提出すれば、該当する項目の健康診断に替えられます。

ただし、雇入れ時健康診断は定期健康診断とは異なり、医師の判断で項目を省略することはできません
入社前3ヶ月以内に健康診断を受診していても項目を満たしていない場合は、改めて雇入れ時健康診断を受診してもらうか、不足している項目を受診する必要があります

             

特定業務従事者の健康診断

特定業務従事者の健康診断を規定する法律は、労働安全衛生規則第45条です。

■労働安全衛生規則第45条
事業者は、第13条第1項第3号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際および6ヶ月以内ごとに1回、定期に、第44条第1項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。
この場合において、同項第4号の項目については、1年以内ごとに1回、定期に、行えば足りるものとする


「第13条第1項第3号」とは特定業務について定めたもので、以下の業務を規定しています。


イ 多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務
多量の低温物体を取り扱う業務および著しく寒冷な場所における業務
ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
異常気圧下における業務
さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
重量物の取扱い等重激な業務
ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
坑内における業務
深夜業を含む業務
水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
その他厚生労働大臣が定める業務


 特定業務従事者の健康診断とは、定期健康診断の代わりに行うもので、一般業務に従事する人が1年以内に1回受診するところ、人体に影響を及ぼしやすい業務に従事していることから、6ヶ月以内に1回と受診の頻度を高めた健康診断のことです。

受診する項目は定期健康診断と同じですが、受診項目のうち「胸部エックス線検査および喀痰検査」に関しては、定期健康診断と同じ、1年以内に1回の頻度で良いと定めらています。


海外派遣労働者の健康診断

海外派遣労働者の健康診断を規定する法律は、労働安全衛生規則第45条の2です。


■労働安全衛生規則第45条の2
事業者は、労働者を本邦外の地域に6ヶ月以上派遣をしようとするときは、あらかじめ、当該労働者に対し、第44条第1項各号に掲げる項目および厚生労働大臣が定める項目のうち医師が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。



これは、海外に従業員を派遣しようとする際、定期健康診断の項目に加えて医師が必要と認めた項目について健康診断を行わなくてはならないとするものです。
海外から帰ってきた従業員が日本国内で業務を開始する前にも、同様の健康診断を行うことが同条2項で定められています

健康診断に加えられる可能性があるのは、以下の項目です。


・腹部画像検査(胃部エックス線検査、腹部超音波検査)
・血中尿酸値の検査
・B型肝炎ウイルス抗体検査
・ABO式およびRh式の血液型検査(派遣前のみ)
・糞便塗抹の検査(帰国時のみ)


また、同条3項では、定期健康診断や雇入れ時健康診断、雇入れ時健康診断に替えた書類を提出している場合実施から6ヶ月以内の結果に限り、当該健康診断の内容を省略することもできると定めています。
つまり、雇入れからすぐ海外派遣となった場合、追加で必要な検査を行い、問題がなければすぐ出発できるということです。


給食従業員の検便

給食従業員の検便を規定する法律は、労働安全衛生規則第47条です。


■労働安全衛生規則第47条
事業者は、事業に附属する食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、その雇入れの際又は当該業務への配置替えの際、検便による健康診断を行なわなければならない


給食従業員の検便は対象となる業務が限られている反面、正社員やパート・アルバイトなどの勤務形態に限らず、従事することが決まった時点で行う必要があることに注意をしましょう。


その他の取り組み

法定健康診断のうち、雇入れ時健康診断や定期健康診断の対象者は「常時使用する従業員」とされています。
これは、正社員だけでなく「1年以上の雇用予定があり、週の労働時間が正社員の4分の3以上」という条件を満たすパート・アルバイトの従業員も対象なので、注意しましょう。

健康診断の結果は、本人の承諾を得た上で一定期間保管しなくてはなりません。
定期健康診断の場合は書面か電子データは5年間の保管義務、一部報告義務があります。

また、労働安全衛生法52条で、「常時50人以上の労働者を使用する事業者は、第44条、第45条、第48条(定期のものに限る)の健康診断を行ったときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書様式第六号を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」とされています。

 つまり、常時使用する従業員が50人以上いる事業場で定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、歯科医師による健康診断を行った場合は、
労働基準監督署長に報告書を提出
しなくてはなりません。

明確な罰則規定はありませんが、報告を長期間怠ると労働基準監督署から連絡や注意を受けることがありますので、結果が出たらできるだけすぐに報告書を提出するようにしましょう。



 
おわりに

 健康診断は、企業が労働者の健康を確保する為に実施するものであり、疾病の早期発見や健康意識の向上として意義があります。
 また、労働安全衛生法により、企業は一定の従業員に対して健康診断を受けさせる義務があります。
 労働者の健康を守るために、定期的に健康診断を受けるように労働者に促すことが求められていますので、この機会に従業員さんの健康についての取り組みを社内で見直してみてはいかがでしょうか。


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