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【京都の社労士コラム】制度運用できていますか?~「無期転換ルール」について~

2023年11月09日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回は、一定の条件に該当する有期雇用労働者を無期雇用労働者へ変更する制度である無期転換ルールについて改めてご案内するとともに、2024年4月以降のルール改正についてご案内いたします。

無期転換ルールとは?

無期転換ルールとは?
 同一の使用者(企業等)との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に、労働者は期間の定めのない労働契約(無期労働契約)への転換の申込みを行うことができるとされており、有期契約労働者(契約社員、アルバイト、パートなど)から無期転換の申込みがあったときは、使用者の意思にかかわらず、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される制度です。(労働契約法第18条)

 企業は、従業員からの無期労働契約に変更したいという希望を拒むことはできません。
 なお、実際に無期労働契約に変更されるのは希望したときではなく、次の更新時に無期労働契約として新たな契約が締結されます。

【例 契約期間が1年の場合】


【例 契約期間が3年の場合】


(出典)厚生労働省『無期転換ルールについて』

 なお、同一の企業とのあいだで有期労働契約を締結していない期間、すなわち「無契約期間」が、一定の長さ以上にわたる場合、それ以前の契約期間は通算対象から除外されます。これをクーリングと呼びます。契約をリセットするための無契約期間を「クーリング期間」といいます。

【例 通算契約期間が1年に満たない場合】
 無契約期間以前の通算契約期間が1年に満たない場合、以下の期間に該当するときは無契約期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含めません。

(出典)厚生労働省『無期転換ルール ハンドブック』P3

【例 通算契約期間が1年以上の場合】
 無契約期間以前の通算契約期間が1年以上の場合、無契約期間が6か月以上であれば、無契約期間以前の契約期間は、通算契約期間に含めません。


(出典)厚生労働省『通算契約期間の計算について(クーリングとは)』

無期転換ルールに関する管理上の注意点

1.雇止め・契約期間中の解雇などについて
 企業が無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めや契約期間中の解雇などを行うことは、法律の趣旨に照らして望ましいものではありません。
 有期労働契約の満了前に企業が一方的に更新年限や更新回数の上限などを設けることは、不当な雇止めとして許されない場合もあります。また、契約期間途中での解雇は、やむを得ない事由がある場合でなければ認められません。
 さらに、契約更新上限を設けたうえでクーリング期間を設定し、期間経過後に再雇用を約束して雇止めを行うことなどは、法律の趣旨に照らして望ましいものとはいえません。

2.社員区分による処遇について
 無期転換ルールで無期労働契約に転換した従業員の労働条件は、就業規則などに別段の定めがある部分を除き、直前の有期労働契約と同一となります。
 しかし、無期転換者と有期契約労働者の労働条件で契約期間以外に差がない場合や、無期転換者と正社員(一般的に無期契約労働者のことが多い)との役割や責任、処遇の区分とそれらの根拠が明確になっていない場合には、いずれ従業員の中に不公平感が生まれ、職場の一体感を損なうなどのトラブルにつながる可能性があります。また、法律的にも同一労働同一賃金の原則に抵触する可能性があります。

転換方法の検討

1.無期労働契約への転換方法を検討する
 無期労働契約への転換方法は、主に以下の3つがあります。

雇用期間の変更
 契約期間のみを変更する転換です。対象は、無期転換前と比べ、職務や処遇を変更する必要がない従業員です。
労働条件を変更せず、期間の定めが有期から無期になります。

多様な正社員への転換
 正社員と比較して、勤務地や労働時間、職務などの労働条件に制約を設けた多様な正社員への転換です。対象は、職務能力や職務内容は正社員と同等でありながらも、家庭の事情などから、転居・転勤を伴う移動が行えないために勤務地に制約がある、または正社員と同じ時間だけ働くことができないような従業員です。
 登用試験や面接などで的確に能力を見極めたうえで、多様な正社員へ転換します。

正社員への転換
 業務内容に制約がなく、入社後定年に達するまで勤務することを想定した、正社員への転換です。対象は、職務能力や職務内容が正社員と同等の従業員です。登用試験や面接などで的確に能力などを見極めたうえで、正社員へ転換します。

 いずれにおいても、処遇の差異とその根拠を明確にしておくことで、トラブル防止につながります。実際に無期転換を進める場合には、従業員本人の意向などを踏まえながら、いずれの転換方法がふさわしいのかについて決定することが大切です。
 また、無期転換をして終了ではなく、中長期的な登用のあり方をあらかじめ想定しておくことも大切です。

【例 中長期的な登用の方法】

(出典)厚生労働省『無期転換ルール ハンドブック』P9

2.適用する労働条件を検討し、就業規則を作成する
 現状の社員区分において制度や施策が整備されているのか、また、そもそも社員区分を新設する必要があるのか、それぞれの社員区分の処遇の違いなどを検討します。
 そのうえで、就業規則の改定箇所の検討を行います。無期転換者用の就業規則を作成した場合には、規程の対象となる従業員を、正社員の就業規則の対象から除外しておく必要があるため、正社員の就業規則の見直しも検討してください。

3.運用と改善を行う
 無期転換をスムーズに進めるうえで大切なことは、制度の設計段階から労使のコミュニケ―ションを密に取ることです。労働組合との協議を行うことや、労働組合がない場合は労働者の過半数代表など従業員との協議を行う場を持ち、労使双方に納得性のある制度をつくることが、スムーズな導入・運用につながります。

 また、現状は無期転換申込権が発生したことについて、使用者が従業員に通知を行う義務まではありませんが、2024年4月からは労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示事項が追加され、無期転換申込権が発生する雇用契約の更新時に「無期転換申込機会」「無期転換後の労働条件」を明示する必要があります。

2024年4月からのルール改定

 2024年4月以降は、有期契約の更新により「無期転換申込権」が発生するタイミングごとに、無期転換を申込むことができる旨(無期転換の申込機会)の明示が必要になります。
 また、無期転換後の労働条件についても詳しく明示しなければなりません。

(出典)厚生労働省『無期転換ポータルサイト』

まとめ
 
 契約社員、アルバイト、パートなど名称が異なる場合でも、期間を定めて雇用している従業員がいる場合は、無期転換への対応は必須となります。
 そして、2024年4月以降は、無期転換の権利が発生する従業員への通知や労働条件の明示が必要となるため、雇用契約を締結したうえで、勤続期間などの管理を行う必要があります。また、現行の就業規則が「無期契約労働者」に対応できていない場合は、規則の改定も必要となってきます。
 今一度、自社の有期契約従業員の状況を確認し、無期転換制度への対応ができているか、また改正後の明示等に対応可能かどうかをチェックされてみては如何でしょうか?

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