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【京都の社労士コラム】令和8年10月施行 カスハラ対策義務化で企業が取り組むべき対応!/短編解説動画あり

2026年03月18日

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  A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回のテーマは、令和8年10月から施行される「カスハラ対策義務化!企業が取り組むべき対応」についてご案内いたします。

 近年、顧客からの過度なクレーム、長時間の拘束、暴言、人格否定などの「カスタマーハラスメント」により、従業員の精神的負担が深刻化し、大きな社会問題となっています。
 
 実際に
 ・従業員の離職
 ・メンタル不調
 ・人材不足
 などの原因にもなっています。
 こうした状況を受け、令和7年に労働施策総合推進法が改正され、令和8年10月にはカスハラ防止のための措置を企業に義務付けることになりました。
 今回はこの改正法の内容と企業が取り組むべき対応策について解説します。


動画解説(3分10秒)是非ご覧ください。
 <画像をクリックすると動画を視聴できます>※倍速視聴も可能です。
 


カスタマーハラスメントとは

 職場における「カスタマーハラスメント」とは、次の①から③までの要素を全て満たすものを言います。
 
 ①顧客等の言動であって、
 ②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
 ③労働者の就業環境が害されるもの

 ※電話やSNS等のインターネット上において行われるものも含まれます。
 ※顧客等からの苦情の全てがカスタマーハラスメントに該当するわけではありません。顧客等からの苦情には、商品やサービス等への改善を求める正当なクレームがある一方で、過剰な要求を行ったり、商品やサービスに不当な言いがかりをつける悪質なクレームもあります。企業には不当・悪質なクレーム、いわゆるカスタマーハラスメントから従業員を守る対応が求められます。
 また、障害者から不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスタマーハラスメントには当たりません。

【①顧客等とは】
 顧客、取引の相手方、施設(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等)の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(今後商品の購入やサービスの利用等をする可能性がある者も含む)
(例)事業主が販売する商品の購入やサービスの利用をする者、事業主の行う事業に関する内容等に関し問い合わせをする者、取引先の担当者、企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者、施設・サービスの利用者及びその家族、施設の近隣住民

【②社会通念上許容される範囲を超えた言動とは】
 社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、又は手段や態様が相当でないものを指し、典型的な例としては以下のものがあります。
 判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当です。


出典|厚生労働省『カスタマーハラスメント対策マニュアルP8』

【③労働者の就業環境が害されるとは】
 当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること

参考|厚生労働省『リーフレット令和8年10月1日からカスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!』


法改正による企業の対応義務

 令和8年10月1日からカスタマーハラスメント対策として、下記内容が企業の講ずべき措置として義務付けられます。
 
◆事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
 ①カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する
 ②カスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めた対処の内容(※)を、労働者に周知する
(※)管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐ、可能な限り労働者を一人で対応させない、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、本社・本部等へ情報共有を行い指示を仰ぐ 等

◆相談体制の整備
 ③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
 ④相談窓口担当者が、適切に対応できるようにする

◆事後の迅速かつ適切な対応
 ➄事実関係を迅速かつ正確に確認する
 ⑥被害者に対する配慮のための措置を適正に行う
 ⑦再発防止に向けた措置を講ずる

◆対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置
 ⑧特に悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する

◆そのほか併せて講ずべき措置
 ⑨相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する
 ⑩相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する

※対策を講ずる際には、消費者の権利や、障害者差別解消法における、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供義務に留意する必要があります。

参考|厚生労働省『リーフレット令和8年10月1日からカスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!』


カスタマーハラスメントによる判例

 カスタマーハラスメントは、最近になって聞く機会が増えましたが、以前から判例も出ております。
 企業としては、判例等も参考に社内のカスハラ対策も検討していきましょう。

【損害賠償責任が認められた判例】
 入院患者から暴行を受けて障害が残った看護師に対し、病院側に安全配慮義務違反があったとして、損害賠償責任を肯定した事案

≪事案の概要≫
 看護師が入院患者から暴力を受けて負傷(後遺障害あり)

≪判決≫
 患者の暴力は完全には防げないものの、
 ナースコールへの応援体制や社内周知が不十分で対応が遅れたとして、病院に安全配慮義務違反ありと判断
 → 約2,000万円の損害賠償(労災給付控除後)

参考|あかるい職場応援団『医療法人社団こうかん会事件』

【損害賠償責任を否定した判例】
 カスタマーハラスメント(カスハラ)を受けた従業員に対し、使用者はカスハラ対策を行っており、安全配慮義務違反はないとして、損害賠償責任を否定した事案

≪事案の概要≫
 コールセンター業務において、従業員が顧客からわいせつ発言や暴言などのカスハラ被害を受けた

≪判決≫
 会社は、
 ・対応マニュアルの作成・周知
 ・通話対応ルールの整備
 ・メンタル相談・産業医面談等のフォロー体制
 を整備しており、必要な安全対策を講じていたと認定
 → 安全配慮義務違反は否定(賠償責任なし)

参考|あかるい職場応援団『NHKサービスセンター事件』

 実際に裁判で扱われたハラスメントについて、判例を閲覧できますので下記リンクも参考にしてください。
 ★あかるい職場応援団「ハラスメント基本情報」裁判例を見てみよう
  下記画像をクリックでリンク先に移行します。
 


まとめ

 カスタマーハラスメントは、ニュース等でも取り上げられる機会が増え、社会的な認知は着実に高まっています。一方で、企業からは「具体的に何をすべきか分からない」といった声も多く聞かれます。
 しかし、カスタマーハラスメントは単に行為者と被害者の問題にとどまらず、企業には従業員の心身の安全や職場環境を守る安全配慮義務が課されています。適切な対策を講じない場合、企業の責任が問われ、損害賠償請求に発展する可能性もあります。
 そのため、事業主と労働者が一体となってカスハラに対する理解を深め、組織として適切に対応していくことが重要です。また、自社が被害者となるだけでなく、取引先等との関係において自らが行為者とならないよう、他社の従業員等に対する言動にも十分な配慮が求められます。

 なお、厚生労働省は、カスタマーハラスメント防止に向けた取組として、以下のような対応を行うことが望ましいとしています。
 ◆カスタマーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取組
  ・労働者が自社の商品やサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図るための研修等
  ・労働者が顧客等への理解を深めるための必要な取組
 ◆労働者や労働組合等の参画を得つつ、雇用管理上の措置の運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めること
 ◆業種・業態等の状況に応じた必要な取組を進めること
 ◆他の事業主が雇用する労働者に対してカスタマーハラスメントを行ってはならない旨の方針を示すこと

 さらに、今回の法改正では、求職者等に対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント対策の強化も図られており、企業にはハラスメント対策全体を具体的に整備・運用していくことが求められています。
 加えて、令和8年1月1日施行の取引適正化に関する法改正(いわゆる中小受託取引適正化法)により、下請事業者等に対する不当な要求や強要の防止も一層重要となっています。

 これからの企業経営においては、従業員を守る体制整備とともに、取引先を含めた関係者すべてに対する配慮ある対応が不可欠です。
 すべての労働者が安心して働ける職場環境の実現に向けて、組織全体で取り組んでいくことが求められています。
 


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