A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。 今回のテーマは、「2025年施行 育児・介護休業法の改正ポイント」についてご案内します。 2024年5月31日、改正育児・介護休業法等が公布されました。この改正では、育児・介護と仕事の両立を目的に、特に多様化する育児期の働き方のニーズや介護の両立支援制度の認知度向上に対応するための制度が拡充されました。 今回の記事では、2025年4月から順次施行される改正法の内容と、企業が注意すべきポイントを解説します。改正に合わせて、就業規則や育児・介護休業規程などの見直しも必要となりますので、ご注意ください。
動画解説(3分16秒)是非ご覧ください。
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育児と仕事の両立支援制度の拡充
今回の改正では、主に3歳以降の子どもを持つ労働者を対象とした新たな制度の導入や既存制度の変更が行われています。この背景には、従来の制度が3歳までを対象としているケースが多いことや、子どもの成長に応じてフルタイム勤務と家庭の両立を目指すニーズが高まっていることが挙げられます。
1.子の看護休暇の見直し(2025年4月施行)
病気やケガ、予防接種など、子の世話を行うために労働者が取得できる「子の看護休暇」の要件が2025年4月1日から拡大されます。 新型コロナウイルスの流行による学校等の休校や学級閉鎖に伴い、仕事を休まざるを得なかった労働者も多くいたことから、取得事由に「感染症による学級閉鎖」や「入園式・卒園式・入学式の参加」が追加され、名称が「子の看護等休暇」に変更されます。 また、休暇を取得できる子の年齢も小学校3年生の修了までに延長され、労使協定による勤続6カ月未満の労働者の除外の仕組みは廃止となります。
2.所定外労働の制限(残業免除)の適用拡大(2025年4月施行)
子を養育する労働者が残業の免除(所定外労働の制限)を受けることができる制度の対象が2025年4月1日から拡大されます。3歳未満の子をもつ労働者から、小学校就学前の子をもつ労働者へと拡大され、さらに柔軟な働き方に対応できるようになります。
3.短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加(2025年4月施行)
2025年4月1日から、労使協定により、短時間勤務制度が困難な業務に従事する労働者を適用除外とする場合の代替措置としてテレワークが追加されます。
4.育児のためのテレワーク導入(2025年4月施行)
2025年4月1日から、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように取り組むことが企業の努力義務となります。
5.育児休業取得状況の公表義務適用拡大(2025年4月施行)
男性の育児休業の取得を促進するため、2023年4月から従業員数が1,000人を超える企業には男性従業員の育児休業の取得状況の公表が義務付けられています。今回の改正により、2025年4月1日から従業員数が300人を超える企業へと対象が拡大されます。
6.育児休業などの状況把握・数値目標設定の義務化(2025年4月施行)
仕事と育児の両立支援に関する企業の取り組みを促進する目的で、2025年4月1日から従業員数が100人を超える企業には一般事業主行動計画の策定時に以下のことが義務付けられます。
・育児休業取得状況や労働時間の把握状況等(PDCAサイクルの実施) |
・育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定 |
7.柔軟な働き方のための措置の義務化(2025年10月施行)
子の年齢に応じて、育児と仕事を両立しながらフルタイムで働くニーズが増えていくことを踏まえ、既存の制度では対応できていない3歳から小学校入学前の子をもつ労働者に対し、柔軟な働き方を実現するための措置が義務化されます。 企業は、以下の制度から2つ以上を選択して措置を講じる必要があります。
【注意点】企業が措置を選択するときには、労働者の過半数労働組合または過半数代表者に意見を聴く必要があります。
また、3歳に満たない子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、企業は柔軟な働き方を実現するための措置として選択した制度(対象措置)に関する以下の事項の周知と制度利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
8.個別の意向聴取・配慮の義務化(2025年10月施行)
企業は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。 企業は、意向聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮を行う必要があります。
介護と仕事の両立支援制度の拡充
介護休業や介護休暇など、介護と仕事の両立支援制度は法律で定められています。しかし、介護を理由に離職した人の中には、仕事を続けたかったにもかかわらず両立支援制度を利用できずに離職した人が一定数います。このような状況を防ぐために、今回の改正では、企業が両立支援制度の周知や雇用環境の整備を行うことが盛り込まれています。
1.介護休暇を取得できる労働者の要件緩和(2025年4月施行)
要介護状態の家族を介護するための介護休暇は、労使協定を締結することで雇用期間が6か月未満の労働者を対象から除外できますが、日常的な介護のニーズは雇用期間にかかわらず存在するため、2025年4月1日からこの仕組みは廃止されます。
2.介護離職防止のための雇用環境の整備の義務化(2025年4月施行)
介護休業や介護両立支援制度の利用の円滑化のため、2025年4月1日から企業は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
3.個別の周知・意向確認の義務化(2025年4月施行)
2025年4月1日から、介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、企業は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
4.制度に関する早期の情報提供の義務化(2025年4月施行)
2025年4月1日から、労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、企業は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません。
5.テレワークの努力義務化(2025年4月施行)
2025年4月1日から、要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように取り組むことが企業の努力義務となります。
出典|厚生労働省 令和6年改正法の概要(政省令等の公布後) 厚生労働省 リーフレット「育児・介護休業法改正ポイント」
まとめ
今回の改正では多くの制度が新設・変更されています。改正法によって義務化される内容を正しく理解し、既存の社内制度を改めて確認して、必要に応じて就業規則等の見直しの準備を進めていきましょう。また、新たな制度やルールについて労働者に周知することや、育児や介護を行う労働者に対して適切に配慮できるように、社内研修などを通じて啓発を行うことも重要です。
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参考|厚生労働省 令和6年度両立支援等助成金リーフレット
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