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【京都の社労士コラム】外国人雇用時の基礎知識と創設される育成就労制度

2024年11月20日

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 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。
 
 今回のテーマは、「外国人雇用時の基礎知識と創設される育成就労制度」についてご案内します。

 厚生労働省の外国人雇用状況(2023年10月末時点)によると、外国人労働者は約204万人初めて200万人を超え、過去最高となっています。国内では依然として深刻な人手不足が続いており、今後も外国人労働者の受け入れは増加が予測されます。 

 今回の記事では、外国人が働くことができる在留資格や、企業が外国人を雇用するときの基本対応、法改正により新たに創設される「育成就労制度」について解説します。
 参考|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)



外国人が働ける在留資格

1.在留資格とは
 在留資格とは、外国人が日本に滞在するための資格です。 一定の活動を行えること、あるいは、一定の身分や地位があることを示します。
 在留資格は29種類あり(2024年10月1日時点)、資格ごとに活動内容が決まっています。 「一定の範囲で就労が認められている在留資格」「就労が認められない在留資格」「就労に制限のない在留資格」に大きく分けられます。

(注1)介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業(令和6年3月29日閣議決定)
(注2)資格外活動許可を受けた場合は、一定の範囲内で就労が認められる。
 参考|出入国在留管理庁『在留資格一覧表』

2.外国人留学生の「資格外活動許可」と労働時間管理
 外国人留学生の在留資格である「留学」は、原則就労ができませんしかし本来の目的である学業を妨げないことを前提として資格外活動許可を取得すると、週28時間以内(※)で就労ができます(風営法の規制対象は除く)。
 ※学校が定める長期休暇中に限り、週28時間を超えての労働(1日8時間、週40時間まで)も可能
 外国人留学生を雇用するときは、資格外活動にかかわる誓約書を提出してもらうこともひとつの方法です。以下を参考にしてください。
 参考・ダウンロード|資格外活動にかかわる誓約書(任意書式) 

3.「技能実習制度」と「特定技能制度」の違い
 在留資格の中でも「技能実習」と「特定技能」は名称が似ているため混同されがちですが、制度の目的は大きく異なります。
技能実習制度 特定技能制度
  • 技能実習制度は、日本で培われた知識や技術を開発途上地域に移転する国際協力の理念のもと設けられた制度で、1993年に創設されました。
  • 技能実習制度の区分は、企業単独型と団体監理型の2種類の受入れ方式があります。
  • 在留資格には「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」の3種類があります。
  • 国内人材の確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人の受け入れを目的に創設された制度で、2018年に可決・成立した改正出入国管理法により在留資格「特定技能」が創設されました。
  • 在留資格には、「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類があります。
 目的が異なれば当然ながら制度内容も異なります。
 たとえば、「技能実習制度」では、技能水準や日本語能力が求められないのに対し(介護職種のみ日本語能力が必要)、「特定技能制度」では、相当程度の知識や経験、日本語能力が必要です。

 以下の図は、技能実習(団体監理型)と特定技能(1号)の比較表です。

 出典|出入国在留管理庁『外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組』P.8

 なお、法令等の改正により、2027年頃を目途に「技能実習制度」は廃止され、新たな在留資格として「育成就労制度」が創設される予定です。


「育成就労制度」の創設

1.育成就労制度の導入背景
 「技能実習」の目的は、人材育成を通じた技能(技術や知識など)の移転による国際貢献です。しかし、実態は企業に労働力として利用されている状況も多いとされています。このほか、技能実習制度では、以下のような問題点が挙げられています。
  • 職種が細分化されており、従事できる業務が限られる
  • 実習修了後は帰国することが原則のため、日本でのキャリアパスが不明瞭
  • 技能実習生に対する人権侵害が発生(暴行、ハラスメントなど)
  • 悪質なブローカーによる違法行為(高額な手数料を要求など)
  • 技能実習生の失踪問題 など
 
 国内の生産年齢人口(生産活動を中心となって支える15〜64歳の人口)の減少は、一層加速すると予想されています。さらに、総人口の減少や高齢化にはますます拍車がかかり、国内の人手不足もより一層深刻になるとみられています。
 そのとき外国人労働者は貴重な労働力となるものの、近隣諸国との人材獲得競争も激化しており、今後は外国人労働者の確保がより難しくなるとも予想されています。
 こうした問題を解消するため、「技能実習制度」を廃止し育成就労制度」が創設されることとなりました。

2.育成就労制度とは
 育成就労制度とは、対象となる分野において外国人労働者を原則3年間就労させながら「特定技能1号」レベルに達するよう育成し、その分野で長期的に活躍してもらえる人材の育成および確保を目的とする制度です。対象となる分野は特定技能の受け入れ対象分野(以下、特定産業分野)と合わせる予定であるため、育成就労の後、特定技能へ移行がスムーズになります。(育成就労の受け入れ対象分野の設定については「3 技能実習生の受け入れ企業が知っておくべきこと」も参考にしてください。)また、激化する近隣諸国との人材獲得競争において、外国人労働者に日本を選んでもらえる魅力ある制度への見直しも行われます。

【育成就労制度の概要】
  • 特定技能1号レベルの人材育成、人材確保を図る
  • 特定時能への移行を見据えたキャリアパスの明確化
  • 一定要件を満たすことにより、本人の意向による転籍が可能となる
  • 労働者としての権利保護を適正に行う
  • 適切なブローカー対策を行う  など
 なお、育成就労制度の創設に伴い「技能実習制度」は廃止されます。在留資格も新たに「育成就労」が加わり、「技能実習」は廃止されます。

【施行時期】
施行日は未定ですが、改正法の公布日(2024年6月21日)から起算して3年以内の施行が決まりました。そのため、2027年頃に開始される見通しです。

【在留期間】
育成就労による在留期間は原則として3年です。その後、一定の技能や日本語能力にかかる試験に合格して「特定技能1号」に移行するとプラス最長5年さらに「特定技能2号」に移行すると在留期間の通算の上限がなくなります。外国人労働者のキャリア形成を支援することにより、日本での長期的な就労が期待されます。

【育成就労から特定技能1号、2号への移行イメージ】

 (注1)特定技能1号の試験不合格となった者には再受験のための最長1年の在留継続を認める。
 (注2)育成就労制度の受入れ対象分野は特定技能制度と原則一致させるが、特定技能の受入れ対象分野でありつつも、国内での育成になじまない分野については、育成就労の対象外。
 出典|出入国在留管理庁『育成就労制度の概要』P2

 特定技能制度では、外国人労働者には一定の専門性や技能を有していることと、即戦力となることが求められます。一方、育成就労制度では、技能に関する要件はありません。ただし、就労開始までに一定の日本語能力を身に付けておくことが求められます。

3.技能実習生の受け入れ企業が知っておくべきこと
①いつまで技能実習生の受け入れが可能か
 改正法の施行日時点で受け入れている技能実習生については、認定を受けた計画(以下、技能実習計画)に基づき、引き続き技能実習を続けることが可能です。「技能実習1号」から「技能実習2号」への移行も可能とされていますが、「技能実習3号」への移行については今後省令で示される予定です。なお、施行日までに技能実習計画の認定申請を行っている場合、施行日から起算して3か月以内に技能実習を開始するときは、技能実習生として受け入れできる可能性もあります。

②受け入れ対象分野の設定
 育成就労制度により外国人を受け入れる場合は、あらためて受け入れ対象分野(以下、育成就労産業分野)を設定します。育成就労産業分野は、原則として特定産業分野と同じ分野になる予定です。(ただし、国内での育成になじまない分野は対象外となる見込み)詳細は施行日までに決定されます。

③手続などの詳細
 育成就労制度の手続のほか、制度の詳細については現在検討が進められています。決まり次第公表される予定です。
 参考|出入国在留管理庁『育成就労制度・特定技能制度Q&A


外国人を雇用するときの基本対応

1.在留カードで在留資格と在留期間を確認する
 在留カードを所持していない外国人は原則就労ができません(一部例外あり)。外国人を雇用するときは、在留カードを確認してください。

 外国人留学生を新規採用するときは、「留学」から卒業後の在留資格へ変更手続が必要です。在留資格の変更が許可されるまでは2か月程度かかり、手続も煩雑です。変更手続後、入社日までに新しい在留資格の許可が間に合わないときは働かせることができないため、内定から入社までのあいだに変更ができているか確認してください。
【在留カードの確認のポイント】
 【表面】
  ・「在留資格」就労が認められている在留資格であるか
  ・「就労制限の有無」が以下いずれかであるか
    ①在留資格に基づく就労活動のみ可
    ②指定書に指定された就労活動のみ可(指定書の確認が必要)
    ➂就労制限なし
  ・「在留カード番号」が失効していないか
  ・「在留期間」が切れていないか  



【裏面】
表面で「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」となっている場合、「資格外活動許可欄」で以下いずれかの記載があるときは就労ができます。  
  ①許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)
  ②許可(教育、技術・人文知識・国際業務、技能に該当する活動
      ・週28時間以内)
  ➂許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)
 参考|出入国在留管理庁『在留カードとは?

2.労働条件や社会保険・労働保険制度などを説明する
 労働関係法令および社会保険関係法令は、国籍にかかわらず適用されます。しかし、日本では当然とされているルールが外国人労働者にとっては馴染みがなく十分に理解できていないことも想定されます。やさしい日本語を使うなどの工夫をしながら、分かりやすく説明することが大切です。
 外国人労働者への説明等の支援ツールが、厚生労働省サイトで紹介されています。参考にしてください。

 参考|厚生労働省『外国人の方に人事・労務を説明する際にお困りではないですか?

3.ハローワークに雇用状況を届け出る
 外国人(外交、公用、特別永住者を除く)の雇入れと退職があったときは、すべての企業に対し、外国人雇用状況の届出が法令等で義務付けられています。
 正社員だけではなく、パート・アルバイト、契約社員など名称にかかわらず、また雇用保険加入の有無にもかかわらず、すべての外国人労働者が対象となります。
 届出方法は、外国人労働者が雇用保険の被保険者となるか否かで異なります。

【雇用保険の被保険者となる場合】
①雇入れ時
 届出様式:雇用保険被保険者資格取得届
 届  出  先:事業所の所在地を管轄するハローワーク
 届出期限:雇入れた日の属する月の翌月10日まで

②退職時
 届出様式:雇用保険被保険者資格喪失届
      雇用保険被保険者離職証明書
 届  出  先:事業所の所在地を管轄するハローワーク
 届出期限:退職日の翌々日から10日以内

【雇用保険の被保険者とならない場合】
 届出様式:外国人雇用状況届け出書
 届  出  先:事業所の所在地を管轄するハローワーク
 届出期限:雇入れ、退職ともに翌月末日まで

 詳しくは、以下のパンフレットを参考にしてください。
 参考|厚生労働省『外国人雇用はルールを守って適正に
 
 なお、これらの手続は電子申請で届出を行うこともできます。
  • 雇用保険被保険者資格取得届:「e-Gov」から申請可能
  • 雇用保険被保険者資格喪失届(および離職証明書):「e-Gov」から申請可能
  • 外国人雇用状況届出書:「外国人雇用状況届出システム」から申請可能
 参考|厚生労働省『外国人雇用状況届出書(様式第3号)による届出はインターネットで登録できます

 4.外国人労働者を常時10人以上雇用するときは「外国人労働者雇用労務責任者」を選任
 外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、外国人労働者が適切な労働条件や安全衛生のもと能力を発揮して働けるよう、雇用管理の改善等に関する責任者を選任する必要があります。ハローワークなどへの届出の必要はありません。


不法就労者を雇用したときの罰則

 「在留資格の有効期限切れ」「就労できない在留資格」「認められた職種以外」などの就労は不法就労となり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの両方を課すと定められています。

 罰則は、不法就労をした本人だけでなく、不法就労となる外国人を雇用した企業にも適用されるおそれがあります。就労できるかどうかの確認を怠った結果、不法就労があったとされるときは責任を問われるため注意が必要です。


まとめ
 
 外国人労働者は、貴重な労働力です。その反面、在留資格や制度を理解せずに雇用を進めた結果、トラブルや早期離職に繋がることもあります。法令等違反にならないように正しく法令等を理解し、外国人労働者の労務管理を適切に行いましょう。


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