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【京都の社労士コラム】出来ていますか?企業に求められる安全配慮義務と罰則

2024年08月26日

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 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回のテーマは、企業に求められる安全配慮義務と罰則についてご案内致します。

 従業員を1人でも雇用する企業は、労働に対して賃金を支払う義務に付随して、労働者の身体・生命を守る「安全配慮義務」を負います。
 この安全配慮義務に違反すると、罰則や社会的責任を負うことになりますので、業務を行う上で日頃から注意が必要です。
 今回は、安全配慮義務違反となった事例をご紹介しますので、自社にて注意が必要なところを認識し、労働環境整備に役立てていただければと思います。


安全配慮義務とは
 
 安全配慮義務とは、従業員の生命や身体の安全、心身の健康などを確保して働けるよう配慮する義務のことです。職場での労働災害を未然に防ぐための、安全衛生管理上の義務ともいえます。
 企業は雇用契約上、従業員に賃金を支払う義務を負います。しかし、ただ賃金を支払う義務を負うだけでなく、付随して従業員への安全配慮義務も負います。

 従業員が危険に遭遇し、たとえケガなどの被害がなかったとしても、事前の対策や予防を怠っていただけで契約違反(債務不履行)となり、損害賠償責任を問われるケースもありますので注意が必要です。

 (参考)厚生労働省『刑事上の責任 民事上の責任

 

安全配慮義務違反の事例および防止対策
 
 職場の安全衛生に関する事項については、労働安全衛生法で業種や規模などに応じて機械の取扱いや高所・暗所等、それぞれの環境に応じた対応について危害防止基準が定められています。
 しかし、企業が配慮しなければならない内容について、労働安全衛生法で定められている事項以外にも、従業員の職種や業務内容、就業場所など具体的な状況に応じた必要な配慮が求められます。
 企業は危険を事前に防止する義務があり、過失だったとしても企業には責任が問われます。

 以下①〜③は、安全配慮義務違反となった事例です。
 ①〜③は典型的なケースですが、④⑤は働き方や環境の変化によって、新たに安全配慮義務違反とならないように気を付けなければならないケースです。
 各ケースとその対策例を参考に、安全配慮義務の取り組みに役立ててください。

 ①事故・災害
製麺会社で働く従業員が製麺機に左手を巻き込まれて骨折した事例です。
製麺機の刃にカバーをかぶせるなどの対策を行っていなかったことや、製麺機の危険性について十分な教育を行っていなかったことから、安全配慮義務の違反が認められました。

ただし、従業員側にも落ち度があるなどの事情も考慮されたため、従業員の過失割合が3割と認定され、企業は損害額の7割の賠償責任を負うこととなりました。


なお、下記参考サイトに、業種別の安全対策に関する資料が紹介されています。自社の業種について確認しておきましょう。
(参考)福岡労働局『パンフレット・リーフレット(安全対策関係)

 ②過重労働
月100時間を超える時間外労働が長期間行われていた事例です。
実際に体調を崩していない状況にも関わらず、安全配慮義務の違反が認められました。

長期間に渡り長時間労働をさせているにもかかわらず、労働時間の減少のための対策を講じなかったことによる責任です。
一般的に、過重労働による安全配慮については、従業員に何らかの病気や精神障害などが発症し、その要因が長時間労働であると判断されたことにより義務違反が認められますが、この事例は、疾病の発症が判断とはなっていません。

長時間労働が従業員の健康に危険を及ぼすことは周知の事実です。だからこそ、企業による労働時間の管理や長時間労働などの対策は非常に重要です。
過労死ラインとされる「2~6か月の平均残業時間が80時間」「1か月の残業時間が100時間」の水準を超えていなくても、これに近い残業を行っている場合は義務違反となる可能性が高くなります。

なお、過重労働は労働時間の長さだけで判断されるものではありません。長時間労働以外の要因による大きな負荷がかかっていなかったかなども考慮して判断されます。


 ③ハラスメント
暴言や暴行などのパワーハラスメントを受けて後遺症が残った事例です。

ある従業員がパワーハラスメントを受けていることを上司が認識しているにもかかわらず、企業が何の対応も行わなかったことに対して、安全配慮義務の違反が認められました。


(参考)厚生労働省『職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です︕

 ④在宅勤務
在宅勤務では直接従業員の様子を確認できないため、労働時間の管理が難しく、労働時間が長時間になる傾向があります。

労働時間の管理が不完全であったり、長時間労働による心身の不調が見られた場合、安全配慮義務違反となる可能性もあります。



 ⑤副業・兼業
従業員の副業や兼業を認めている企業では、副業や兼業先での労働時間も考慮する必要があります。
適切な対応を行わなかったことにより従業員が体調を崩してしまった場合など、安全配慮義務違反となる可能性もあります。


なお、従業員が個人事業主として事業を行っている場合の兼業については注意が必要です。
個人事業主は労働基準法が適用されないため法定労働時間の問題は生じません。そのため個人事業主として兼業している従業員への配慮は不要と考えられがちです。

しかし、企業はその従業員を雇用している以上、心身の疲労など健康への安全配慮を行わなければなりません。
個人事業主が兼業として自社でも勤務している場合は、定期的に個人事業での勤務状況などを報告させることをおすすめします。時間の把握を行うとともに、心身の不調などが見られる場合は適切な措置を行う必要があります。


安全配慮義務を怠ったときの罰則

 ①労働契約法
安全配慮義務が定められている労働契約法では、義務を怠ったことによる罰則の定めはとくにありません。

ただし、安全配慮義務を怠ったことにより何らかの問題が発生した場合など、状況によっては民事上の責任(債務不履行、不法行為責任、使用者責任など)として多額の損害賠償を請求される可能性もあります。

 ②労働安全衛生法
労働安全衛生法には、従業員の安全と健康を守るために企業が取り組まなければならない義務などが定められています。義務を怠った場合には罰則があります。

労働安全衛生法はあくまでも最低限守るべき基準です。この基準を満たすだけで足りるというものではなく、個別の状況に応じた最低基準以上の必要な対策を行うことが安全配慮義務では求められています。
また、労働安全衛生法上の罰則を免れられたからといって、民事上の損害賠償責任が無くなるわけではありません。


まとめ
 
 安全配慮義務違反により、労働安全衛生法の罰則以外にも、民事上、刑事上の責任を問われる可能性もあります。
 違反を問われるような状況や事故が起きれば、従業員の心身への影響と併せて企業の社会的信頼も失いかねません。その結果、取引先からの信用失墜、優秀な人材の流出など、大きなダメージを受ける可能性もあります。

 安全配慮義務は、従業員の危険をあらかじめ予測し対策を行うものです。
 日々、法改正が行われていますが、法律以上に企業が積極的な取り組みや配慮をすることで一つ一つリスクが軽減していきます。

 企業には、労働者を安全に労働させる責任があることを再認識をして頂き、職場環境の改善及び働き方等について見直しをしてみてはいかがでしょうか?


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