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【京都の社労士コラム】最低賃金、昨年をさらに上回る過去最高の上げ幅!

2024年08月08日

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 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回のテーマは、「令和6年度の最低賃金」についてご案内致します。

 令和6年7月25日に令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられ、公表されました。

 各都道府県の引上げ額の目安については、Aランク50円Bランク50円Cランク50円となり、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,054円となります。
 この場合、全国加重平均の上昇額は50円(昨年度は43円)となり、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額となります。また、引上げ率に換算すると5.0%(昨年度は4.5%)となります。
 
 今後、今回の目安を受け、各都道府県の地方最低賃金審議会での地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により最低賃金が決定されます。
 改定後の最低賃金の施行は10月上旬となる予定です。具体的な施行日については、今後都道府県ごとに決定されます。

 
 (出典)厚生労働省『令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について

 以下、会社がおさえておく最低賃金のポイントと今だからこそ活用できる助成金をご説明致します。


最低賃金とは?
 
 最低賃金とは、法令で定められている、労働に対して支払わなければならない1時間あたりの最低限度の賃金をいいます。  
 企業は、正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員に最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。最低賃金を下回る賃金を支払っていたときは、50万円以下の罰金が課せられると最低賃金法で定められています。
(参考)厚生労働省『最低賃金制度とは

 

最低賃金に含まれる賃金とは
 
 月給制や月額手当があるときは、1時間あたりの賃金を計算し、最低賃金を上回っているかを確認する必要があります。最低賃金の計算に含まれる賃金は、従業員に毎月決まって支払われる基本給や各種手当です。
 ただし、以下の賃金は最低賃金の計算から除外されます。最低賃金と残業代とでは含める賃金が異なりますのでご注意ください。

【最低賃金から除外される賃金】
①慶弔手当など臨時的に支払われるもの
②賞与
➂残業手当(固定残業代)、休日手当、深夜手当
④精皆勤手当
⑤通勤手当
⑥家族手当
 ※1時間あたりの賃金計算は、残業代の計算にも使用しますが、残業代の賃金計算のときは、④を含めます。 
  また、④~⑥の賃金について、従業員に一律で支給しているときは最低賃金と残業代いずれの賃金にも含めます。

【含める場合の例】
 ・遅刻、早退、欠勤などがあっても精皆勤手当を満額支給(減額なし)している
 ・扶養家族がいる、いないにかかわらず家族手当を支給している など


最低賃金で企業がおさえておく3つのポイント

1.最低賃金の発行(改定)年月日をまたぐ勤務について
point
 3交代勤務制などでは、夜勤シフトの従業員が最低賃金の改定日をまたいで勤務することがあります。
 最低賃金は、都道府県ごとの発行(改定)年月日以降に勤務する給与から適用します。そのため、最低賃金の改定日をまたいで勤務をしたときは、0時より新しい最低賃金の適用となるように給与を計算してください。  
 
(例)勤務日:9月30日
   勤務時間:21:00 ~ 翌朝5:00
   最低賃金改定日:10月1日
   改定前の最低賃金を適用する時間:21:00 ~ 0:00
   改定後の最低賃金を適用する時間:0:00 ~ 5:00

2.遠方で自宅テレワークする従業員の最低賃金について
point 
 インターネットの普及により、企業の所在地から離れた自宅でテレワーク勤務している従業員もいます。最低賃金の適用は事業場の場所によって決まりますが、事業を行う独立性を有する一つの事業場と認められないときは、所属する事業場の所在地を対象と考えます。
 そのため、自宅でテレワーク勤務を行う従業員に適用する最低賃金は、テレワークを行う場所がどこかにかかわらず、テレワーク勤務を行う従業員の所属する事業場の所在地がある都道府県になります。
 
(例)企業の所在地:大阪府
   テレワーク勤務者の自宅:沖縄県
   最低賃金の適用:大阪府の最低賃金

3.毎月、所定労働時間が変動する場合の月給者の最低賃金の計算方法について
point
 暦日数の関係やシフト制、変形労働時間制を適用している場合など、1か月の所定労働時間が変動することがあります。月給者の最低賃金は、1年間における1か月の平均所定労働時間を使い計算してください。
 また、1か月の平均所定労働時間に少数点以下の端数がでたときは、端数の切り上げ・切り捨てを行わず、計算の結果算出された時間を使って最低賃金を計算します。


ここからは、最低賃金引上げまでに検討していただきたい「このタイミングに活用できる助成金」についてご案内致します。
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設備投資に活用できる業務改善助成金

 業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
(出典)厚生労働省『令和6年度 業務改善助成金

 動画内では助成金活用のポイントを紹介しています。是非ご覧ください!
 <画像をクリックすると動画を視聴できます(動画解説(2分54秒))>


1.対象事業者及び申請の単位
 事業場ごとに申請をします。
 事業場とは企業全体ではなく本社、支社、店舗など一定の範囲で業務を独立して行っている場所です。

【対象事業場】
 ・中小企業・小規模事業者※であること
 ・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
 ・解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
  ※中小企業・小規模事業者とは以下のA又はBの要件を満たす事業者です。

(出典)厚生労働省『業務改善助成金(申請マニュアル)』p.3

2.対象となる経費
 助成対象となる経費は「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」です。
 業種によって様々な設備投資などが考えられますので、下表のほか、業種別の活用事例や「生産性向上のヒント集」を参考にしてください。

(令和6年度申請分)


【業種別の活用事例・生産性向上のヒント集】
・活用事例集             ・生産性向上のヒント集(冊子)
 ①製造業編
 ②卸売業・小売業編
 ③宿泊業・飲食サービス業編
 ④生活関連サービス業・娯楽業編
 ⑤医療・福祉編
 ⑥人材育成・教育訓練の活用事例

3.助成上限額及び助成率
①助成上限額
 
  ※ 10人以上の上限額区分は、<特例事業者>が対象です。

②助成率
 申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって、助成率が変わります。
 ・900円未満の場合、9/10
 ・900円以上950円未満の場合、4/5(9/10)
 ・950円以上の場合、3/4(4/5)
  ※( )は、生産性要件に該当した場合の助成率
  

4.申請の流れ詳細フロー図はこちらをクリック
①交付申請(計画書の提出)

  交付申請の期限 2024年12月27日
   ※申請期限内であっても予算がなくなったときは、
    申請を早めに打ち切られることがあります。
 
②事業実積報告及び支給申請書の提出

  以下のいずれか早い方です。
   a. 計画完了後1か月以内
   b. 2025年2月28日

③状況報告の提出

  以下のいずれか遅い日から起算して1月以内
    a.賃金額を引き上げてから支払請求手続きを行った日の前日
    b.賃金額を引き上げてから6月を経過した日
 ※申請先は、各都道府県労働局の雇用環境・均等室です。


最低賃金引き上げのタイミングで活用!?
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

 有期雇用労働者等※の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成。つまり、今回の最低賃金が適用される1日でも前の日に最低賃金の額に昇給することで、対象になり得ます。
 ※一部の有期雇用労働者等の賃金を増額する場合には、その区分が雇用形態別または職種別、その他合理的な理由(部門別等)に基づき区分されている場合に限り、対象労働者と認めます。
 (出典)厚生労働省『令和6年度 キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)』p.32~

1.対象となる労働者
①増額改定日の前日から起算して3か月以上前の日から増額改定後6か月以上の期間継続して雇用されている有期雇用労働者等
②増額改定した賃金規定等を適用され、かつ、増額改定前の基本給に比べて3%以上昇給している者
③賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月前の日から支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給および定額で支給されている諸手当を減額されていない者
④賃金規定等を増額改定した日以降、雇用保険被保険者であること
⑤事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者
⑥支給申請日において離職(本人都合、天災、本人の責めに帰す解雇を除く)していない者

2.対象となる事業主
①有期雇用労働者等に適用される賃金規定等を作成している事業主
②賃金規定等を3%以上増額改定し、当該賃金規定等に属する有期雇用労働者等に適用させた事業主(新たに賃金規定等を整備する場合を含む。)
③増額改定前の賃金規定等を、3か月以上運用していた事業主(新たに賃金規定等を整備する場合は、整備前の3か月分の有期雇用労働者等の賃金支払状況が確認できる事業主)
④増額改定後の賃金規定等を6か月以上運用し、かつ、対象労働者について定額で支給されている諸手当を減額していない事業主
⑤支給申請日において当該賃金規定等を継続して運用している事業主
(ただし、増額改定後であって最低賃金の引上げに伴う変更は除く。)

3.支給額及び加算額
①支給額
  1人当たりの助成額は以下のとおりです。
 
 ※1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人

②加算額
 
 ※1事業所あたり1回のみ

4.申請の流れ
①キャリアアップ計画書の提出
  増額改定日の前日までに提出する必要があります。
 
②取組みの実施

  以下のいずれも実施
   a.賃金の増額改定
   b.就業規則(賃金規定)の改定
 
③支給申請書の提出

  賃金規定等を改定した(賃金規定等の増額を適用した)後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に申請
※申請先は、管轄の都道府県労働局またはハローワークです(管轄の助成金センターが申請先になっている場合もありますので、詳しくはHPでご確認ください。)。


まとめ
 
 最低賃金の引き上げにより、労働保険料(労災保険、雇用保険)、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の負担も増えます。早めに対策を検討するとともに、助成金をうまく活用し、生産性向上につなげていきましょう。


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