A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。 本日は労働保険の年度更新についてご案内致します!!
令和6年6月3日より労働保険の年度更新申告の受付が開始されています。 年度更新とは、毎年6月1日から7月10日までのあいだに労働保険料を計算し、納付を行う毎年定例の手続です。厚生労働省から企業宛てに、年度更新の申告書および納付書が同封された緑色(青色)の封筒が5月末から6月初旬に到着するように発送されます。 本年の申告・納付期限は、令和6年7月10日(水)です。
今回の記事では、年度更新の基本情報に令和6年度の変更点を盛り込んでご案内致します。
労働保険の年度更新とは
労働保険は、労災保険と雇用保険の2つの保険の総称になります。 年度更新は、従業員がいるすべての企業が実施しなければならない手続で、前年度に従業員に支払った賃金を月ごとに集計し、業種ごとに定められた保険料率を掛けて保険料を計算します。賃金を集計する期間は、前年度4月1日から3月31日のあいだに働き、支払いが確定した分の賃金になります。 労働保険はすべての従業員に適用しますが、事業の種類や雇用の仕方によって適用方法が異なり、「一元(一般的な業種)」と「二元(建設業や林業など賃金だけでは労災保険料が計算しにくい、労災保険料率が複数適用されているなど)」に分かれます。
令和6年度の年度更新手続きの変更点
令和6年度の年度更新に関する保険料率や様式の変更点をお伝えします。
1 年度更新に関する保険料率 【雇用保険料率(事業主負担、従業員負担)】 令和6年度の雇用保険料率は前年度と同じ保険料率のため、改定はありません。
参考 厚生労働省『令和6年度の雇用保険料率について』
【労災保険率等(事業主負担のみ)】 労災保険率は原則として3年ごとに改定されるため、令和6年4月より労災保険率が改定されました。 労災保険率は事業の種類ごとに定められています。 令和6年度の概算保険料は新しい料率(労災保険率表の「新」列)で、前年度の確定保険料はこれまでの料率(労災保険率表の「旧」列)で保険料を計算します。 なお、建設事業の労務費率や第2種特別加入保険料率についても令和6年4月より改定されました。 以下のパンフレットで自社の労災保険料率について確認してください。
参考 厚生労働省『労災保険の料率が変わります』
【一般拠出金率(事業主負担のみ)】 一般拠出金は、業種を問わず一律「0.02/1,000」です。
2 年度更新申告書や算定基礎賃金集計表の様式が変更になっています。 雇用保険料率が令和4年度の途中で変更されたことへの対応として、昨年の年度更新では前期(4月~同年9月)と後期(10月~翌年3月)に分けて保険料額のもととなる算定基礎賃金を集計する必要があり、年度更新申告書や算定基礎賃金集計表の様式も一部変更されていました。 今年の年度更新は、4月〜翌年3月までの1年間の算定基礎賃金をもとに計算するため、例年通りの様式に戻っています。
【年度更新申告書の変更箇所】 年度更新申告書の下段「期間別確定保険料算定内訳」欄が削除されています。
【確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表の変更箇所】 令和5年4月〜3月の1年間の算定基礎賃金を集計する様式に変更されています。 また、算定基礎賃金集計表の下段「確定保険料算定内訳」欄が削除されています。
3 令和6年度に対応した年度更新申告書支援ツールが公開 毎年、年度更新の申告書にあわせた計算支援ツールが厚生労働省から公開されます。Excelで作成されているため使いやすくなっています。厚生労働省のHPよりダウンロードが可能です。
参考 厚生労働省『主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)』
年度更新申告書を作成するときのチェックポイント
1 労働保険対象労働者 労働保険の対象労働者は、労災保険と雇用保険で異なります。従業員の月ごとに支払うすべての賃金を集計するときに、正しい対象労働者を選定しないと保険料が正しく計算できません。 【労災保険】
時間・日数・期間を問わず、労働の対償として賃金を受けるすべての従業員が対象です。役員や事業主と同居している親族は対象外です。派遣従業員については、派遣元事業場での適用になります。 |
【雇用保険】
正社員、契約社員、パート・アルバイトなど雇用形態にかかわらず、すべての雇用保険の被保険者が該当します。役員で雇用保険に加入している兼務役員も含まれます。 雇用保険の被保険者とは、1週間の労働時間が20時間以上かつ31日以上引き続いて雇用されることが見込まれる従業員です。また、雇用保険マルチジョブホルダー制度により雇用保険に加入している65歳以上の従業員も対象です。
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2 労働保険料の計算に含める賃金、含めない賃金 従業員へ月ごとに支払う賃金には、労働保険料の計算に含める賃金と含めない賃金があります。賃金、手当、賞与など名称にかかわらず、労働の対償として支払うすべてのものが対象となります。
【含める賃金】
基本給、各種手当、賞与、通勤費(定期券)、休業手当 など |
【含めない賃金】
役員報酬、慶弔見舞金、退職金、解雇予告手当、休業補償費 、実費弁償的な費用 など |
3 年度更新書類に同封されている申告書の確認 年度更新書類に同封されている申告書には、企業の労働保険料に関する重要な情報が記載されています。登録情報を確認してから手続を始めるようにしてください。電子申請や年度更新申告書支援ツールを使用するときは、登録情報を入力して手続を進めてください。 また、企業側で管理している情報と登録情報が異なるときは、年度更新の封筒に記載されている管轄の都道府県労働局にお問い合わせください。
参考 都道府県労働局所在地一覧
年度更新へ効率よく対応するために
1 登録情報の確認 年度更新は、前年度4月1日から3月31日までの従業員の月ごとに支払うすべての賃金を集計することから始まります。給与ソフトで年度更新用の賃金を集計作業ができるものもありますが、入社日や退職日、雇用保険の加入有無、労働保険の対象となる賃金設定などに誤りがあると、正しい保険料計算ができません。毎月の給与計算を確実に行っていれば、急な対応を避けることができます。
2 電子申請による申告書の提出 電子申請には、前年度の情報を取り込めたり、入力チェック機能や自動計算機能を効率よく使えるというメリットがあります。提出先である労働局や労働基準監督署の窓口に出向く必要もなく、申告書記入漏れや記入ミスも防止できます。
参考 厚生労働省『労働保険は電子申請』
3 保険料の口座振替 口座振替に手数料はかかりません。口座振替による納付で、毎回金融機関の窓口に行く手間や待ち時間が解消されます。納付漏れも防止でき、延滞金の心配がありません。納付期限についても、納付書で保険料を納付するよりも、保険料の引き落としに最大2か月のゆとりができます。なお、令和6年度より対象金融機関に「ゆうちょ銀行」が加わっています。
参考 厚生労働省『労働保険料は口座振替が便利です!』
まとめ
今年も年度更新の申告の時期がきました。労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度)を単位とし、すべての労働者(雇用保険については、被保険者)に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定する必要があります。期限までに納付せず、滞納となってしまうと延滞金が発生する場合もあります。早めに必要な情報を集め、漏れなく申告期限までに提出を行いましょう。
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