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【京都の社労士コラム】今年の最低賃金の引上げはどうなる?

2022年08月04日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

先日、今年度の最低賃金の引上げについて中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)は、全国平均31円、率にして3.3%の引上げを目安として示しました。円安などによる物価高で賃金が目減りしている現状を踏まえ、2年連続で過去最大の上げ幅となります。

各都道府県の引上げ額の目安については、Aランク31円、Bランク31円、Cランク30円、Dランク30円


注.都道府県の経済実態に応じ、全都道府県をABCDの4ランクに分けて、引上げ額の目安を提示している。現在、Aランクで6都府県、Bランクで11府県、Cランクで14道県、Dランクで16県となっている。
(参照)厚生労働省 令和4年度地域別最低賃金改定の目安について

目安通りに引き上げられると全国平均で時給961円となります。


最低賃金が決まるまでの流れ

最低賃金は毎年見直されていますが、そもそも最低賃金がどのようなスケジュールで更新されているのかをご紹介いたします。

【毎年7月末】引き上げ額の目安発表
厚生労働省の中央最低賃金審議会にて、毎年の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられ、その結果が公表されます。時期は毎年7月末。
※昨年は最低賃金の引き上げに熱心な菅義偉前首相による政治主導で過去最高額の28円で決着しましたが、この決定を不服とした経営者側が、採決を求める異例の事態に発展していました。今回は昨年の反動もあり、労使代表と有識者委員の議論を尊重する形で進められ、客観的な資料に基づく合意形成が行われ、例年よりも長引いていました。

各都道府県の引上げ額の目安については、A~Dに振り分けられます。

中央最低賃金審議会の目安を参考に、各都道府県の審議会での議論を経て各都道府県労働局長が決定します。

【毎年10月1日ごろ】最低賃金の改定実施
地域によって発行年月日が異なるので毎年チェックが必要です。特に求人を掲載している場合、最低賃金を1円でも下回った求人を掲載することは法律違反となり掲載の継続が出来なくなる場合もあるのでお気をつけください。
 
最低賃金とは

最低賃金とは、法令で定められている、労働に対して支払わなければならない1時間あたりの最低限度の賃金をいいます。
企業は、正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員に最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。最低賃金を下回る賃金を支払っていたときは、50万円以下の罰金(最低賃金法40条)が課せられることもあります。

最低賃金には、都道府県ごとの物価等に合わせて定められる地域別最低賃金、特定の産業で定められる特定最低賃金の2種類があります。

特定最低賃金は、都道府県により対象となる産業が異なることがあります。

(引用)京都労働局 京都府最低賃金
 
最低賃金に含まれる賃金とは

月給制や月額の手当があるとき、1時間あたりの賃金を計算し、最低賃金を上回っているか確認する必要があります。最低賃金の計算に含まれる賃金は、従業員に毎月決まって支払われる基本給や各種手当です。   

ただし、以下の賃金は最低賃金の計算から除外されます。
➀慶弔手当など臨時的に支払われるもの
②賞与
③残業手当(固定残業代)、休日手当、深夜手当
④精皆勤手当
⑤通勤手当
⑥家族手当

1時間あたりの賃金計算は、残業代の計算にも使用しますが、残業代の賃金計算のときは、④を含めます。最低賃金と残業代とでは含める賃金が異なりますのでご注意ください。

また、④~⑥の賃金について、従業員に一律で支給しているときは最低賃金と残業代いずれの賃金にも含めます。

最低賃金の計算方法

(1)時間給制の場合
  時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
(2)日給制の場合
  日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合、次のようになります。 日給≧最低賃金額(日額)
(3)月給制の場合
  月給 ÷ 1ヶ月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

歩合制や異なる賃金形態の組み合わせの場合の換算方法など、詳細は厚生労働省のHPでご確認下さい。

<参考>最低賃金額以上かどうかを確認する方法(厚生労働省)

最低賃金を下回っていた?!よくある誤解

最低賃金を気にしていたはずなのに、実際には下回っていた?!ということが起こってしまうことがあります。以下にあてはまったら要注意!です。

◆雇用形態ごとに違うと思っていた…
最低賃金は、職業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くパートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態のすべての労働者に適用されます。

◆試用期間は別だと思っていた…
試用期間中も最低賃金は例外ではありません。

ただし、使用者より申請のあった業種または職種の労働者の賃金水準について、試用期間中に減額する合理的な理由がある場合のみ「減額特例」の許可の対象となります。労働者が「減額特例※」が適用される期間は最長で採用から6ヶ月以内で、特例許可申請書を都道府県労働局長へ提出し許可を受けられれば、最低賃金より20%減額した給与を支払えます。
ただし、過去の統計を見ると試用期間中の減額特例の申請を行った使用者は無いようです。
※減額特例
最低賃金の減額特例が適応される労働者は以下になります。
1. 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
2. 試の使用期間中の者
3. 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定のもの
4. 軽易な業務に従事する者
5. 断続的労働に従事する者
※減額特例の対象者や要件などにより、減額率は各自算定されます。

◆出来高払いなので、関係ないと思っていた…
出来高払制によって計算された賃金の総額を、賃金算定期間において出来高払制で働いた総労働時間数で割った金額が、時間当たりの換算額となります。
例えば、出来高払制で総労働時間40時間で35,000円の賃金を支給した場合は、35,000÷40=時間給換算875円です

10月の最低賃金の改定実施前に賃金の引き上げで助成金

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
パート従業員などの有期雇用労働者等に対し、賃金を2%以上引き上げることで助成の対象となります。(※有期雇用労働者等とは、正社員以外のパート、アルバイト、嘱託、契約社員を指します)
厚生労働省HP キャリアアップ助成金

業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。
生産性向上等に資する設備投資を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合にその設備投資にかかった費用の一部が助成されます。
厚生労働省HP 業務改善助成金
※一つの取り組み(賃金引上げ等)に対して複数の助成金の併給はできませんのでご注意ください。

最後に

最低賃金は企業にとって事業の収益に大きく関わるため、気になる方も多いことでしょう。
コロナ禍の影響はありながらも「地方との格差の是正」や「働き方改革」をかかげる政府の方針により、2022年以降も最低賃金の上昇が予想されます。
賃金が引き上がると労働保険料(労災保険、雇用保険)、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の負担も増えます。どのくらい負担が増えるのか、早めに確認をして対策を検討する必要があります。

“誰でもできる仕事を社員が行っていないか”、“仕組化できる業務がないか”など、より時間とお金をかけるべきところに集中できる体制作りがこれからは企業に求められます。
 
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