ブログ

【京都の社労士コラム】令和8年10月施行 求職者等に対するセクハラ対策が企業の義務に~採用で今から準備すべき企業の対応とは~

2026年06月18日

ブログ一覧戻る





 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。
 今回は、令和8年10月から施行される「求職者等に対するセクハラ対策義務」についてご案内いたします。
 
 令和7年6月に改正された男女雇用機会均等法により、令和8年10月1日から企業の採用活動におけるセクシュアルハラスメント対策が法律上の義務となります。
 従来の「社内の労働者」に対するハラスメント防止措置だけでなく、求職者やインターンシップ参加者など、社外の求職者等に対しても適切な対応を講じることが企業に求められるようになります。

 採用活動は企業イメージに直結する重要な場面です。一方で、面接や企業によってはOB訪問など閉鎖的・個別的な接触が発生しやすく、トラブルにつながるケースも少なくありません。


求職者等に対するセクシュアルハラスメントとは?

 求職者等に対するセクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、
 事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等による求職活動等が阻害されるものをいいます。

 求職者等には、求職者(企業の求人に応募する者)以外にも、インターン生や教育実習生、看護実習なども含まれます。
 求職活動等には、採用面接以外にも、就職説明会への参加、OB訪問、インターンシップへの参加、教育実習、看護実習等の受講も含まれます。

 性的な言動とは、
 性的な内容の発信及び性的な行動を指し、男性も女性も加害者にも被害者になり得るほか、同性に対するものも該当します。

【性的な内容の発言】
  • 性的な事実関係を尋ねること
  • 性的な内容の情報を意図的流布すること など

【性的な行動】
  • 性的な関係を強要すること
  • 必要なく身体に触ること
  • わいせつな図画を配布等すること など
 

就職活動中のセクハラは珍しくない

 厚生労働省の「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書 (P.232)」では、就職活動中にセクハラ被害を受けたと回答した学生は31.9%、
 インターンシップ中では30.1%という結果が示されています。
 約3人に1人が何らかのセクハラ被害を受けたという計算となり、採用活動におけるハラスメントは決して例外的な問題ではないと言えます。
 
 また、加害者として多く挙げられたのは、採用担当者だけではなく、OB訪問対応者リクルーター社員でした。
 企業としては、「正式な採用面接以外は個人対応」という認識では済まされない時代になっています。

 引用:令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書 


法改正で何が変わるのか?

 これまで男女雇用機会均等法におけるセクハラ防止義務は、基本的に「雇用している労働者」が対象でした。
 しかし改正後は、次のような人も保護対象に含まれます。

【改正後、保護対象となる人】
  • 新卒採用中の学生
  • 中途採用応募者
  • インターンシップ参加者
  • 実習生
  • OB  OG訪問を行う学生 など
 
 つまり、「まだ雇っていないから対象外」という考え方は通用しなくなります。
 企業が管理すべき範囲は、採用活動全般へと広がることになります。


どのような行為が問題になるのか?                                 

 採用場面では、企業側と求職者側に立場の差があります。
 そのため、企業側には「そのつもりがなくても圧力として受け取られる可能性がある」という認識が必要です。

 例えば、以下のような言動は注意が必要です。
 【注意が必要な言動例】
  • 個人的なSNS交換の要求
  • 必要性のない食事や飲み会への誘い
  • 恋愛や結婚等に関する質問
  • 外見への評価や容姿への発言
  • 採用への影響を示唆する発言 など
 特に近年は、オンライン面談やSNSでの接触も増えており、従来以上にルール整備が重要になっています。
 
 
企業に求められる主な対応

 今回の改正では、企業に対して「雇用管理上必要な措置」を講じることが求められます。
 具体的には、次のような対応が想定されています。

 1.ハラスメント禁止方針の明確化及びその周知
 就業規則や社内規程等に、求職者等へのハラスメント禁止を明記します。
 あわせて、違反時の懲戒対象となることも整理しておく必要があります。
 単に規程へ追加するだけでなく、採用担当者や現場社員への周知・教育まで行うことが重要です。
 
 2.求職活動等に関するルールの整備
 OB訪問やリクルーター面談は、トラブルが発生しやすい場面です。

 例えば以下のようなルール設定が考えられます。
【ルールの設定例】
  • 個人SNSでの連絡の禁止
  • 飲酒を伴う面談の禁止
  • 面談記録の保存
  • オンライン面談時の注意事項整備
  • 面接は複数対応を原則化 など
 「現場任せ」にしないことがポイントで、労働者及び求職者名等に周知する。

 3.相談窓口の設置
 社内だけでなく、求職者が利用できる相談窓口を整備する必要があります。

 採用サイトや募集要項に相談先を掲載し、「困った時に相談できる体制」が見える状態にしておくことが求められます。

 4.相談発生時の対応体制
 実際に相談があった場合に備え、対応フローを事前に決めておくことも重要です。

【相談発生時の対応体制】
  • 誰が対応するのか
  • どのように事実確認するのか
  • 被害者への配慮をどう行うか
  • 再発防止をどう実施するか
 初動対応の不備が、企業リスクを大きくするケースも少なくありません。


対応を怠った場合のリスク
 
 対策不足は、単なる法令違反にとどまりません。
 SNSで情報が拡散されれば、企業イメージや採用活動に深刻な影響を及ぼします。

 多くの求職者は「安心して働ける環境か」を重視する傾向が強く、ハラスメント対応への姿勢そのものが企業選択の判断材料になっています。
 また、行政指導や企業名公表、損害賠償請求へ発展する可能性もあります。


今から進めておきたい実務対応

 令和8年10月施行までに、企業は以下の整備を進めておきたいところです。

  • 就業規則・懲戒規程の見直し
  • 採用担当者研修の実施
  • リクルーター運用ルールの作成
  • 相談窓口の整備
  • 採用HPへの掲載内容確認
「昔からこのやり方だった」が通用しなくなる場面も増えていくでしょう。


カスタマーハラスメント対策も同日に義務化へ

 なお、令和8年10月1日からは、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策についても、企業に対応義務が課される予定です。
 顧客や取引先からの暴言・過剰要求・威圧的言動などから従業員を守るため、企業には相談体制整備や対応方針策定などが求められます。
 
 今回の求職者等に対するセクハラ対策とあわせて、企業全体としてハラスメント防止体制を総合的に見直していく必要があるでしょう。

 カスタマーハラスメント対策については、以前当事務所でも解説しておりますので、詳細は下記記事をご覧ください。

【関連記事】:令和8年10月施行 カスハラ対策義務化で企業が取り組むべき対応!/短編解説動画あり



まとめ

 今回の法改正は、企業に対し「採用段階から適切な配慮を行う責任」を明確に求めるものです。
 ハラスメント対策は、単なるリスク回避ではありません。求職者から信頼され、選ばれる企業づくりにもつながります。
 令和8年10月の施行に向け、自社の就業規則や採用フローを一度見直してみてはいかがでしょうか。


手続きサポートはA社会保険労務士法人まで!!
 
 法令に対応した労務相談や就業規則の作成・改定、労使協定の締結、各種助成金の申請支援なども行っています。 
 助成金の活用や退職金相談、労働保険・社会保険関係の手続きなど人事労務に関することはA(エース)社会保険労務士法人にお任せ下さい!
 さらに、福利厚生となる企業型確定拠出年金の導入、勤怠・労務管理のDX化、Web給与明細や社会保険・労働保険手続き、給与計算など、様々なサービスを提供しています。
 お気軽にご相談ください。


ご相談はお問い合わせフォームから
















A社会保険労務士法人 2026