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【京都の社労士コラム】2025年10月から始まる新制度【 教育訓練休暇給付金 】とは?

2025年10月16日

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A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 教育訓練休暇給付金とは、教育訓練を受けるために休暇を取得した従業員が受け取れる給付金です。雇用保険の加入者であるなど、一定の要件を満たす従業員に支給される給付金で、2025年10月より制度がスタートしております。

 従業員がスキルアップのために休暇を取りたくても、休暇中に無給だと生活費に困るため取得をためらい、あきらめてしまう従業員もいると思います。しかし、教育訓練休暇給付金を利用すれば給付金を受け取ることができ、企業にとっても、従業員のスキルアップが期待できるため、メリットとなる制度です。

 今回は、教育訓練休暇給付金対象者や、給付額給付期間申請方法についてご案内いたします。
 
教育訓練休暇給付金とは?

 従業員が離職することなく教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合、失業給付(基本手当)に相当する給付として賃金の一定割合を支給することで、訓練休暇期間中生活費を保障する制度です。

 一定の条件を満たす雇用保険一般被保険者が、就業規則等に基づき連続した30日以上無給教育訓練休暇を取得する場合、教育訓練休暇給付金の支給を受けることができます。

【 制度概要 】


参照:厚生労働省【 教育訓練休暇給付金のご案内
参照:厚生労働省【 教育訓練休暇給付金って?

教育訓練休暇給付金の給付額
 
 教育訓練休暇給付金の給付額や給付期間は年齢などによって異なります。教育訓練休暇給付金の1日あたりの給付額は、離職したときに支給される失業手当と同様に、賃金日額をもとに算出されます。

 失業手当の1日あたりの金額(基本手当日額)は、原則として離職日直前6か月の賃金の平均額のおよそ50% ~ 80%(60歳 ~ 64歳は、45% ~ 80%)で算出され、以下のように年齢区分ごとに上限額が定められています。
【 年   齢 】 【 基本手当日額の上限額 】
29歳以下 7,255円
30歳 ~ 44歳 8,055円
45歳 ~ 59歳 8,870円
60歳 ~ 64歳 7,623円
 なお、基本手当日額下限額は、全年齢2,411円です。
※上記表の額は、令和7年8月1日現在のものです。

 教育訓練休暇給付金も休暇開始前の直近6か月間賃金日額を基準に給付額が決まり、制度全体が一貫した設計となっています。

参照:厚生労働省【 雇用保険の基本手当日額が変更になります


教育訓練休暇給付金の給付期間

 教育訓練休暇給付金が支給される期間は、教育訓練休暇を開始した日から起算して1年以内に取得した日となります。 支給日数は被保険者期間に応じて90日120日150日のいずれかとなります。

 ただし、当該期間内に妊娠出産育児などの理由で30日以上教育訓練を受けることができない場合は、ハローワークに申し出ることで最大4年以内の教育訓練休暇を取得している日について受給することができます。

参照:厚生労働省【 教育訓練休暇給付金って?

教育訓練休暇給付金の受給要件・対象者

 教育訓練休暇給付金の支給を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
教育訓練休暇給付金の受給要件

✅就業規則等に基づく教育訓練休暇(無給)を取得していること

✅雇用保険の被保険者であること
✅雇用保険の被保険者期間が一定期間以上あること

就業規則等に基づく教育訓練休暇(無給)を取得していること
 労働協約や就業規則等により設けられた制度に基づく30日以上の休暇(無給)を取得して、職業に関する教育訓練を受けることが要件です。休暇を取得した日のうち、収入を得ない日について支給されます。なお、対象となる教育訓練は以下のいずれかです。
対象となる教育訓練

✅大学・高等専門学校・専修学校または各種学校が行う教育訓練
✅教育訓練給付金の支給対象として厚生労働大臣の指定を受けた講座を実施する施設が行う教育訓練
✅その他職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの
 ただし、事業主が解雇等を予定している従業員には支給されません。

雇用保険の被保険者であること
 雇用保険の加入対象になるのは、以下の要件を満たす従業員です。
雇用保険の加入要件

✅1週間の所定労働時間が20時間以上であること
✅31日以上の雇用見込みがあること
 パートやアルバイトなど雇用形態に関わらず、要件に該当すれば原則として雇用保険に加入する必要があります。

雇用保険の被保険者期間が一定期間以上あること
 被保険者期間に関する要件は、以下の2つです。
雇用保険の被保険者期間に関する要件

✅被保険者期間が5年以上ある
✅休暇開始前2年間に被保険者期間が12か月以上ある
 ただし、疾病・負傷などの理由で30日以上賃金の支払いを受けることができなかった場合は、最大で休暇開始前4年間に被保険者期間が12か月以上あれば受給できます。

教育訓練休暇給付金の申請方法

 従業員が教育訓練休暇給付金の受給を希望した場合、事業主がハローワークに申請します。申請手続きの流れは、以下の通りです。

 事業主が申請した後は、ハローワークが教育訓練休暇の目的や期間などの要件を満たしているのかどうか確認します。

 従業員が30日以上の休暇を取得して教育訓練を受講し始めたら、30日ごと教育訓練休暇の取得状況についてハローワークへ申告しなければなりません。申告して認定を受けられると、当該認定に係る日数分の給付金が支給されます。


参照:厚生労働省【 教育訓練休暇給付金のご案内(事業主向け/簡略版)
参照:厚生労働省【 教育訓練休暇給付金のご案内(労働者向け/簡略版)

教育訓練休暇給付金に関する注意点

 教育訓練休暇給付金に関する注意点は主に次の2つです。
教育訓練休暇給付金に関する注意点

✅離職時の失業手当に影響する
✅勤務先に教育訓練に伴う休暇制度がないと利用できない

離職時の失業手当に影響する

 一般的に、離職前の2年のうち12か月以上雇用保険に加入していれば、直近6か月間に支払われた月収の50% ~ 80%の賃金日額給付日数分が離職後に失業手当で受け取れます。しかし、教育訓練休暇給付金受給すると、原則として休暇開始前の被保険者期間である直近6か月間に支払われた月収の50% ~ 80%の賃金日額給付日数分は、失業手当の支給対象外です。

 教育訓練休暇給付金を受給した後6か月以内に退職すると、休暇期間中のみ12か月の被保険者期間を満たさないと、失業手当を受け取れない可能性があります。

 ただし、以下のいずれかに該当する従業員は、離職時の被保険者期間に、休暇開始前の期間も含めて算定されます。
特定教育訓練休暇給付金受給者の要件

✅離職が事業主の事業について発生した倒産、事業の縮小・廃止に伴うものである者として省令で定めるもの
✅解雇その他の省令で定める理由により離職した者

勤務先に教育訓練に伴う休暇制度がないと利用できない
 教育訓練休暇給付金の対象となるのは、労働協約や就業規則等により定められた教育訓練休暇制度に基づいて休暇を取得する場合です。

 教育訓練休暇制度がある企業の従業員を対象とした給付金なので、勤務先に教育訓練休暇制度がなければ利用できません。

参照:厚生労働省【 教育訓練休暇給付金について


まとめ

 2025年10月からスタートしている教育訓練休暇給付金を利用すれば、スキルアップに伴って休暇(無給)を取得する場合でも賃金の一定割合の給付金を受け取れます。

 給付金の対象者は、雇用保険の被保険者期間が一定期間以上あるなど、要件を満たす人です。教育訓練休暇を開始した日から1年以内30日以上教育訓練休暇を取得した場合、その取得した日に応じた給付金が受給できます。

 従業員が給付金を受け取るためには、事業主30日ごと教育訓練休暇の取得状況をハローワークへ申告しなければなりません。教育訓練休暇給付金の利用を検討する場合には、申請方法や受給要件など制度の詳細な内容を厚生労働省のサイトで確認、またはA社会保険労務士法人までお問い合わせください。 


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