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【京都の社労士コラム】2025年6月1日改正 熱中症対策で企業に求められる対応とは!?

2025年07月01日

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 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回は、『2025年6月1日改正 企業に求められる熱中症対策』についてご案内いたします。

 日ごとに気温が高まる季節となり、報道等でよく目にする『熱中症』ですが、皆様の職場では熱中症対策は万全でしょうか?
 昨今の猛暑から職場における熱中症による死亡災害が2年連続で30人レベルで推移しており、他の災害に比べ死亡に至る割合が約5~6倍高いことがわかってきました。又、死亡災害のほとんどが「初期症状の放置・対応の遅れ」といった適切な対応が出来ていなったこともあり、
こういった背景から、2025年6月1日から、「労働安全衛生規則」が改正され、これまで努力義務とされていた熱中症対策がすべての企業(事業者)に対し「義務化」されることになりました。
 そこで今回は、具体的に何をしなくてはいけないのか対策が出来ていないとどうなるのかを解説致します。


『熱中症』とは?

今となっては、もはや夏の代名詞とも言えてしまいそうなこの『熱中症』とは、高温多湿な環境で長時間過ごしたり、激しい運動や作業を行ったりした際に、体温調整機能がうまく働かなくなることで起きる健康障害の総称です。
体内に熱がこもってしまうことで、さまざまな症状が現れ、重症化すると命の危険も伴います。

区分 症状 身体の状態 対応策 緊急度
軽度 ・めまい・立ちくらみ
・顔のほてり
・筋肉のけいれん(足・腕など)
体温上昇により血管が拡張
塩分・水分のバランスが乱れている
涼しい場所で休憩
スポーツドリンクなどで
水分・塩分補給
★☆☆(注意)
中等度 ・頭痛
・吐き気、嘔吐
・倦怠感(だるさ)
・大量の発汗、または汗が出ない
体温がさらに上昇
脱水や塩分不足が深刻化
体を冷やす
水分補給(意識がある場合)
医療機関の受診を検討
★★☆(要注意)
重度 ・意識障害(呼びかけに応じない)
・けいれん
・高体温(40℃以上)
・ふらつき、まっすぐ歩けない
中枢神経に障害が発生
命の危険がある状態
救急車を呼ぶ(119)
冷却処置をしながら医師の
到着を待つ
★★★(緊急)

~ 注意ポイント~

「汗をかかない」=重症化のサインです。水が飲めない・吐いてしまう場合も重症の可能性があります。
意識がもうろうとしている・問いかけへの返答が曖昧な場合は、躊躇わずにすぐ救急要請をしてください。


参考資料:厚生労働省『働く人の今すぐ使える熱中症ガイド』



どんな職場が対象になるの?



建設現場・工場・倉庫・屋外作業・厨房などが主な対象
ですが、屋内でも空調が効きにくい環境も対象となります。 



※暑さ指数(WBGT値):諸熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数
 単なる気温だけでなく、温度・輻射熱・気温の要素を組み合わせて算出する『熱中症の危険度を表す指標
 
 
~point~

暑さ指数(WBGT値)の活用方法

1 表1-1に基づいて身体作業強度とWBGT基準値を比べる


  基準値を超える場合
   ・冷房などで当該作業場のWBGT基準値の低減を図ること
   ・身体作業強度(代謝率レベル)の低い作業に変更すること(表1-1参照)
   ・WBGT基準値より低いWBGT値である作業場所での作業に変更すること

   


参考:厚生労働省『職場における熱中症対策の強化について』 



企業が取るべき対応は?

 今回の法改正で企業に求められる対応として、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止するため、以下の「体制整備」、「手順作成」、「関係者への周知」が事業所に義務付けられます。


対応の具体例としては次の通りとなります。
      
           
 
1の具体策】
熱中症のリスクが高い環境下での業務は一人では行わせずに、2~3人のチームを組んで対応させることで、万が一の場合にいち早く発見報告が
迅速に行えるよう体制整備を整えましょう。
ウェアラブルデバイス(※)を従業員に着用させる等し、より迅速かつ正確に熱中症のリスクを発見し、対応する事が出来ます。
特に建設現場や工場など、熱中症のリスクが高い環境では効果が期待出来る為、オススメです。

ウェアラブルデバイス:スマートウォッチ又はスマートウォッチ型のデバイス
デバイスから取得した心拍数や体温、発汗量等のバイタルデータを分析して、熱中症の予兆を察知してアラートを発信します。
その他にも、休憩や水分補給を促すタイミングを通知する他、労働者に転倒や体調不良等が発生した場合に管理者へ通知が届く等の機能があります。
 

2の具体策】
事業場における緊急連絡網等の整備と、実際に事案が発生した際の対応手順のフロー図を作成し、従業員で周知させる必要があります。

下記のフロー図を例に作成し、事業所の見やすい場所に掲示するなどして、周知させる事をおススメします。  
   

           





参考:厚生労働省『職場における熱中症対策の強化について』 



義務違反時の罰則

今回の2025年6月1日の改正により、前述の熱中症対策義務に違反した場合には、以下の罰則が適用されるようになりました。


違反行為 適用条文 刑罰
熱中症対策を講じなかった個人(事業主や担当者等) 労働安全衛生法 第119条 6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金
同上の違反をした法人 労働安全衛生法 第122条 50万円以下の罰金

 又、違反内容に応じて、当該業務の一部又は全部の中止命令や施設使用停止や改善命令等の行政処分といった措置命令が下される可能性もあります。


 
まとめ

近年、職場での熱中症による死亡事故や重症発症が増加傾向にあり、そのほとんどは、初期対応の遅れが原因で重症化するケースであることから、今回の初期対応体制の整備を法的義務として義務付ける流れになりました。
上記の対応以外にも、まずは「熱中症予防」としてスポーツドリンクの準備や塩タブレット、空調服の整備といった、まずは熱中症にならないようにする対策と従業員個人も日頃からの体調管理を徹底する必要があります。 
熱中症は、業務や通勤との因果関係が認められた場合には、労災として認定される可能性のある命に関わる労災です。企業として「予防できる事故」を未然に防ぐ体制づくりが求められています。
2025年の法改正を機に、今一度、職場の環境と運用ルールを見直しましょう。


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