A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。
今回は、『従業員定着率を上げる方法』についてご案内いたします。
新年度を迎え、新たな従業員を雇用された企業も多いことかと思います。 昨今、人手不足が叫ばれる中、転職市場の拡大もあり従業員の定着率向上施策も注目されるようになりました。 人材の定着は、企業の中のノウハウや教育コストなどの面で大変重要な視点となります。
企業の成長と安定のため、お役立ていただけたらと思います。 短編の動画もご案内しておりますので、是非ご覧ください。
企業を悩ませる人材不足の波
〇日本が人口減少時代に突入。人口が減り続ける日本
日本の人口の推移を長期でみると、これまではほぼ一貫して増加していました。しかしながら、ここ100年でこれまで経験したことない急激なペースで人口が減少。人口減少は単なる数の問題にとどまらず、必然的に超高齢社会へと直結します。現時点で65歳以上の高齢者が人口の25%を超え、2030年代には3人に1人が高齢者という水準が予測されています。 さらに、労働力人口の減少は企業の生産力やイノベーション創出力を低下させ、国内需要の縮小は市場規模の縮小を引き起こします。地方では少子高齢化と若年層の都市流出が同時に進み、過疎化・限界集落化が深刻化。地域経済や公共サービスが維持困難になるケースも少なくありません。 こうした状況は、経済成長の停滞や地域間格差の拡大を通じて、国の持続可能性そのものを揺るがす重大な課題です。今後は、働き方改革・デジタル化・地域活性化など、多角的な政策と社会構造の抜本的な見直しが喫緊の課題となっています。 |
 引用「人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて」厚生労働省
〇労働者全体も減少へ、人手不足の倒産も相次ぎ
人口減少の更なる進行は、日本社会全体はもちろん、個別企業にとっても極めて重大な問題。 特に、倒産件数全体に占める人手不足関連倒産の割合が近年上昇しているなど、人手不足は今や企業にとって死活問題です。コロナ禍から経済が立ち直りを見せる中、生産年齢人口の急激な減少とも相まって、更に深刻化する恐れがあります。政府も支援補助金や税制優遇措置を通じ、生産性向上投資を後押ししていますが、企業自らが危機感をもって抜本的な人材・業務戦略を再構築することが不可欠です。人手不足はもはや「一時的な課題」ではなく、日本経済の持続可能性を左右する“構造的リスク”として、早急かつ多角的な対応が求められています |
 引用「人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて」厚生労働省
就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者38.4%、新規大卒就職者34.9%
〇人手不足にも関わらず、早期退職が増加傾向
厚生労働省は、令和3年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況を取りまとめています。 就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が38.4%(前年度と比較して1.4ポイント上昇)、新規大学卒就職者が34.9%(同2.6ポイント上昇)となりました。 また、産業別では宿泊業,飲食サービス業が最も高く、過半数の新規学卒者が3年以内で離職をしています。 |
 引用「新規学卒就職者の離職状況」厚生労働省
【3分動画】若年労働者を定着させる!その要因と効果的な対策とは?
近年、多くの企業で若手社員の離職率が上昇傾向にあります。若手が早期に退職してしまうと、人手が不足するばかりか、新たに人材を採用・育成するためのコストや時間が膨大にかかり、現場の負荷はさらに高まります。結果として、既存社員への業務偏重やモチベーション低下を招き、組織全体の生産性や企業ブランドにもネガティブな影響が広がってしまいます。そこで、若手が「ここで長く働きたい!」と思うために効果的な対策をお伝えします。 |
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新たな働き方の制度化や福利厚生で定着率アップ
〇様々な定着率アップの施策
<柔軟な勤務制度(時差出勤・フレックスタイム)> 副業・兼業を行う従業員の健康を守るため、自社での労務と副業先での労務の兼ね合いを考慮し、時間外・休日労働の免除や抑制を行うなど、柔軟な勤務制度を導入することが望ましいとされています。
<研修・教育支援制度> 社外セミナー受講費用や資格取得試験の受験料を補助することで、社員のスキルアップを支援します。
<健康増進支援(健診・スポーツ補助)> スポーツジム利用料の補助、ウェルネスアプリの導入などで社員の健康維持をサポートします。
<退職金制度・企業年金制度> 勤続年数や最終給与をベースに、退職時に一時金を支給する制度です。 定年退職後や中途退職の場合に支給方法(確定給付型/確定拠出型)を選べる場合もあります。 また、会社が積み立てた資金を将来の年金として給付する仕組みで確定拠出年金など法的な仕組みがあります。 |
〇特に企業型確定拠出年金は「長く働いてもらう」を主軸に置いた福利厚生制度
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、従業員の老後資産形成を支援する制度であり、長期的な雇用関係を前提とした福利厚生制度としての性格を持っています。 企業が掛金を拠出し、従業員がその資金を自ら運用する仕組みであるため、従業員にとっては長く働くほど運用期間が長くなり、将来受け取る年金額の増加が期待できます。 これは、企業にとっても従業員の定着率向上やモチベーション維持につながるメリットがあります。 |
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教育や研修に活用できる助成金も多数
事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
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〇人材開発助成金
❶ 人材育成支援コース ❷ 人への投資促進コース ❸ 事業展開等リスキリング支援コース ❹ 建設労働者技能実習コース ❺ 教育訓練休暇等付与コース ❻ 建設労働者認定訓練コース
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これらのコースの中でも幅広く活用が可能な、「人材育成支援コース」では以下のような計画を行うことで活用を目指すことができます。 |
<人材育成支援コース>

OFF-JT/OJT とは? OFF-JTとは、企業の事業活動(通常の業務・生産ライン)と区別して実施する座学・実技訓練をいい、OJTとは、適格な指導者(※)による指導のもとで、企業内の事業 活動の中で実施する実習訓練をいいます。 ※訓練を実施する事業所の事業で報酬を貰っている役員等の方や同事業所から賃金を貰っている従業員
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まとめ
人材確保の競争が激化する中、企業が優秀な人材を引き付け、長期的に働き続けてもらうためには、単に給与水準を高めるだけでなく、福利厚生制度や人材教育への投資が不可欠です。まず福利厚生制度は、社員の生活安定や心身の健康維持を支える基盤であり、通勤手当や住宅手当はもちろん、企業年金など、多様な制度を整備することで「ここで働きたい」と感じさせる魅力を高めます。 人材教育は、変化の速い市場環境で自社の競争力を維持するための要であり、入社時の導入研修から階層別研修、資格取得支援、eラーニングまで多彩なプログラムを用意することで、社員一人ひとりの成長意欲を喚起し、仕事へのモチベーションや業務遂行能力を向上させます。さらに、福利厚生と教育制度は相乗効果を生み、社員は「自分の将来を会社が真剣に考えてくれている」と実感しやすくなるため、定着率の向上や離職率の低減につながります。 結果として、採用コストの削減や企業ブランドの向上にも寄与し、持続的な成長を支える重要な経営戦略と言えます。 国の制度や助成金を賢く活用し、人材確保への新たな施策をチャレンジいただけたらと思います。 |
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法令に対応した労務相談や就業規則の作成・改定、労使協定の締結、各種助成金の申請支援なども行っています。 助成金の活用や退職金相談、労働保険・社会保険関係の手続きなど人事労務に関することはA(エース)社会保険労務士法人にお任せ下さい!さらに、福利厚生となる企業型確定拠出年金の導入、勤怠・労務管理のDX化、Web給与明細や社会保険・労働保険手続き、給与計算など、様々なサービスを提供しています。お気軽にご相談ください。
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