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【京都の社労士コラム】労働時間の前後の時間の取扱い~着替えの時間は労働時間??

2025年05月07日

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 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 今回は、『労働時間等の取扱い』についてご案内いたします。

 労働基準法の改正により、中小企業でも2020年4月から「時間外労働の上限規制 (※)」が適用されました。

 労働基準監督署へのお問合せが多い「研修・教育訓練等が労働時間に該当するか」について、実際の相談事例をもとに解説します。

 労働時間の適正な管理にお役立て頂けたらと思います
  ※ 時間外労働の限度時間を原則月45時間、年360時間とし、臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、 単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)と設定。


労働時間とは

 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。 使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。


労働時間の前後の時間の取扱い ~着替えの時間は労働時間??


【相談事例~労働時間に該当しない事例】

更衣時間
について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しません
交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しません




【相談事例~労働時間に該当する事例】

①就業規則に明記されている場合
 就業規則などで「制服着用」が義務づけられていれば会社の業務命令とみなされ、着替え時間は労働時間に含まれます
 【参考判例】大星ビル管理事件(最判平成12年3月9日)

②黙示の業務命令がある場合
 制服未着用に罰則や人事評価への影響があると、明記がなくても黙示の命令とされ、着替え時間は労働時間となり得ます。

③安全・衛生上の必要性がある場合
 看護師や作業員など、安全や衛生の観点で制服着用が必須なら、着替えも業務の一環とされ労働時間に含まれます
【参考判例】大星ビル管理事件(同上)

④更衣場所の拘束がある場合
 制服通勤が困難で社内更衣を義務づける場合着替え時間も会社の管理下にあり、労働時間とみなされます。




研修・教育訓練の取扱い

 研修・教育訓練について業務上義務づけられていない自由参加のものであればその研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません
  ※ 研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育訓練であっても労働時間に該当します。


【相談事例~労働時間に該当しない事例】

①終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会
②労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、 一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外 に行う訓練。
③会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない




【相談事例~労働時間に該当する事例】

①使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修
自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学



 会社での「研修・教育訓練」の時間が労働時間に該当するかについては、あらかじめ労使で取扱いを話し合い、確認しておきましょう!!


仮眠・待機時間の取り扱い

 仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しません


【労働時間に該当しない事例】

週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間。




【労働時間に該当する事例】

仮眠時間であっても、業務から完全に解放されていない場合労働時間に含まれます。たとえば夜勤の警備員が異常時に対応できる状態待機している場合などです。最高裁は「大星ビル管理事件」(最判平成14年2月28日)において、こうした仮眠時間も労働時間にあたると判断しています。




直行直帰・出張に伴う移動時間の取扱い

 直行直帰・出張に伴う移動時間について、移動中に業務の指示を受けず業務に従事することもなく移動手段の指示も受けず自由な利用が保障されてい るような場合には、労働時間に該当しません


【相談事例~労働時間に該当しない事例】

①取引先の会社の敷地内に設置された浄化槽の点検業務のため、自宅から取引先に直行する場合の移動時間
②遠方に出張するため、仕事日の前日に当たる休日に、自宅から直接出張先に移動して前泊する場合の休日の移動時間




【相談事例~労働時間に該当する事例】

①自宅から直接現場に向かう場合や、最後の現場から直接帰宅する場合(直行直帰)については、通常の通勤と同様に扱われ、労働時間には該当しないと判断されるケースが一般的です。
この区別は、移動が業務の一環として行われているか、単なる就業場所への移動かという点で判断されます。営業職の現場間移動では、拘束性の度合いと業務との関連性から、取引先への往復時間や現場間の移動時間は、移動自体が業務の一環として行われているため基本的に労働時間として認められます


出張に伴う移動時間については、原則として労働時間には含まれません。ただし、移動中に具体的な業務指示がありその場での対応が求められるような場合には例外となりその対応に要した時間は労働時間として取り扱われます。移動中であっても、指示に基づいて業務を行った場合には、使用者の指揮命令下にあると判断されます。

在宅勤務を行う従業員が外出を含む業務を行う場合には、当日の業務開始から終了までの流れ全体を通じて労働時間とみなされます。たとえば、自宅で業務を始めた後に訪問先を回り、再び自宅で作業を行うような場合には、その間の移動にかかる時間も勤務時間に含まれます。




まとめ



労働時間に該当しないとする場合には、上司がその「研修・教育訓練」を行うよう指示しておらず、かつ、 その「研修・教育訓練」を開始する時点において本来業務や本来業務に不可欠な準備・後処理は終了して おり、労働者はそれらの業務から離れてよいことについて、あらかじめ労使で確認しておきましょう。

具体的には、「研修・教育訓練」について、通常の勤務場所とは異なる場所を設けて行うことや、通常 勤務でないことが外形的に明確に見分けられる服装により行うことなどを定め、こうした取扱いの実施手続を書面により明確化することが望ましいと考えられます。

労働時間の適正な管理は、企業の労務リスクを軽減し、従業員の働きやすい環境を整える上でとても重要 です。
また、労働時間の解釈を誤ると、未払い残業代などの労務トラブルに発展しかねません。自社の運用が適正か、今一度見直してみませんか?



  参考:労働時間の考え方:「研修」・教育訓練」等の取扱い


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