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【京都の社労士コラム】社会保険の扶養範囲と健康保険証発行の基本的な流れ/税法上の扶養とは

2022年12月22日

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 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。

 このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 本日は、『社会保険の扶養範囲と健康保険証発行の基本的な流れ/税法上の扶養とは』についてのご案内です。

 扶養という言葉をよく聞きますが、扶養には社会保険上の扶養と税法上の扶養の2種類があります。人事労務担当者はすでに把握されているかもしれませんが、別々の法律に基づくため対象者の範囲が異なります。
 今回は、前半に社会保険の扶養範囲と健康保険証発行の基本的な流れ、後半に税法上の扶養についても簡単に解説します。

(注)今回の健康保険は協会けんぽの手続きを記載しています。健康保険組合等の場合は各健康保険組合の手続きに従ってください。

社会保険の基本的な扶養手続の流れ

1 従業員・役員から扶養追加の依頼を受ける
 婚姻や出産などの理由により、配偶者や親族を扶養追加したいと連絡があったときは、扶養情報を確認します。扶養家族の氏名や異動日の間違い防止のためにも、以下の確認事項を記載した任意書式(扶養家族異動届など)を準備し、提出してもらうことがおすすめです。
 また、年金事務所へ届出をするときは、扶養家族のマイナンバーも必要となります。扶養追加する人のマイナンバーの収集も行ってください。
 ※住民票を取得することで早くマイナンバーを確認出来ます。

≪扶養情報の確認事項≫
 ①扶養追加日
 ②扶養追加の理由
 ③扶養追加したい人の名前(ふりがな)
 ④生年月日
 ⑤性別
 ⑥従業員本人との続柄
 ⑦マイナンバー
 ⑧同居の有無
 ※別居時は住所の確認をしてください。
 扶養家族が海外に留学しているときなどは「日本に住んでいない理由」を確認ください。
 ⑨扶養者の職業と年間収入
 ⑩夫婦共働きにより共同扶養のときは、共同扶養者の今後1年間の年間収入見込み

2 扶養家族に該当するかを確認する
 健康保険では、被保険者(従業員本人)に扶養されている家族を被扶養者といいます。
 被扶養者に該当するには「被扶養者の範囲」と「被扶養者の収入基準」のいずれも満たす必要があります。

≪被扶養者の範囲≫
被保険者の収入により生計を維持する、以下のいずれかに該当する家族です。
 ・配偶者(内縁関係含む)
 ・子ども、孫、兄弟、姉妹 
 ・本人の父母、祖父母(配偶者の父母、祖父母は含みません。) 
 ・同居の3親等内の親族 (伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
 ・同居の内縁関係の配偶者の父母および子ども



≪被扶養者の収入基準≫
年間収入が130万円未満(60歳以上または障害年金受給者は180万円未満)で、かつ、同居の有無に応じて以下に該当する家族です。
 ・同居のとき:被扶養者が被保険者の収入の半分未満
 ・別居のとき:被扶養者の年収が被保険者からの仕送り額未満
 ※被扶養者の年間収入に何が入るかは、以下「被扶養者の年間収入に含まれるもの」をご覧ください。

3 必要書類の案内をする
被保険者に、年金事務所へ届出するときに必要な書類を案内します。

≪続柄が確認できるもの≫
マイナンバーがあればOK ※無い場合は住民票等

≪被扶養者の年間収入がわかるもの≫
①年金額がわかる書類(年金額の改定通知書など)
②課税(非課税)証明書
③給与明細書
④離職票 など
※同居で、被扶養者が学生のときや所得税法上の扶養親族(年収103万円以下)のときは、証明は必要ありません。
また、別居のときは、仕送り額がわかる書類(現金書留の控えや銀行の通帳のコピーなど)が別途必要です。

4 扶養家族の書類を作成し届出する
 情報が集まったら、届出に必要な「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を作成し、管轄の年金事務所または事務センターに届出をします。
 手続は事実発生から5日以内となっており、手続が遅れると健康保険証の発行が遅れます。
参考・ダウンロード 年金事務所『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』

5 健康保険証と通知書が企業へ届く
 2週間程度で、協会けんぽから企業宛に「健康保険証」が届きます。
 到着後、健康保険証を従業員へ渡してください。健康保険証を紛失したときなどにスムーズに手続するためにも、健康保険証の番号を控えておくほうが良いでしょう。
 3月4月の入退社が多い時期は年金事務所の処理も混雑します。通常以上に保険証の発行に時間がかかりますので、これまで記載したステップ4の扶養手続の届出日までにステップ1から3の対応を行っておくと、健康保険証をお急ぎの従業員への対応もスムーズに進めやすくなります。

被扶養者の年間収入に含まれるもの

 被扶養者の収入基準は、年間収入130万円未満(60歳以上または障害年金受給者は180万円未満)です。被扶養者の年間収入は、働いて得た収入以外にも失業保険、育児休業給付金、年金、不動産収入、障害・遺族年金、傷病手当金など、非課税対象の収入も含まれます。
※1 年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。

 以下を例に、被扶養者の収入に応じた必要書類を依頼してください。

【給与収入】
直近3か月の給与明細、雇用契約書 など

【事業収入等】
自営業による収入、不動産収入の直近の確定申告書 など

【その他の収入】
失業保険の雇用保険受給資格者証、育児休業給付金支給決定通知書、年金、障害・遺族年金、傷病手当金など受取金額の確認ができる通知書、課税(非課税)証明書 など

税法上の扶養とは

 納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを扶養控除といいます。
 配偶者以外の親族は「扶養控除」、配偶者は「配偶者控除又は配偶者特別控除」が該当してきます。その年の1月1日から12月31日の実際の年間収入で判断します。

≪配偶者以外の親族「扶養控除」に該当する人の範囲≫
 扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
※控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
 参考:国税庁 No.1180扶養控除

≪「配偶者控除」に該当する人の範囲≫
 控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。なお、平成30年分以後は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。

(1)民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
 参考:国税庁 No.1191配偶者控除

≪「配偶者特別控除」に該当する人の範囲≫
 配偶者に上記(3)年間の合計所得金額を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる場合があります。これを配偶者特別控除といいます。
 上記(3)以外の要件かつ次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。

(1)年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(給与のみの場合は103万円超から201.6万円未満)
(2)配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。
(3)配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)。
(4)配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)。
 参考:国税庁 No.1195配偶者特別控除
    国税庁 No.2672 年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるとき


社会保険と所得税の扶養関係

 これまで記載したように社会保険での扶養範囲と税法上の扶養範囲は違いがあります。給与収入の場合について、下記表に簡潔にまとめましたのでご確認ください。
 【扶養の範囲について】

【収入とのバランス】


まとめ

 従業員の中には扶養の範囲で働くことを希望される方もいると思います。その際には、税法上の扶養か社会保険上の扶養かの意思を確認し、収入等を検討してください。
 毎年、最低賃金の引き上げが行われ、扶養の範囲内で働くために労働時間を削減されたり、扶養から外れて働く方など様々です。どちらにしても会社として適切な対応をしていく必要があります。会社の担当者は従業員から相談があった際にどのように制度を説明し、対応していくか考えておきましょう。

 今後、扶養から外れて労働時間を延長し社会保険に加入したり、パートから正社員になる方なども増えてくる可能性もあります。その際にはキャリアアップ助成金なども活用できます。
 参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金」

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