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【京都の社労士コラム】《 従業員 10人以上 》事業場に求められる対応すべき労務管理!

2023年09月21日

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 A(エース)社会保険労務士法人の足立徳仁です。
このコラムでは、人事・労務に関する様々なQ&Aや法改正情報、助成金・補助金などの新着ニュースをお届けしてまいります。

 本日は『従業員の人数によって、事業場に求められる対応すべき労務管理』についてご案内します。
 
 会社の労務管理においては、労働基準法を始めとして、多数の労働関連の法律が適用されます。従業員数が法律上の基準に達しているにも関わらず、対応を失念していて、必要な労務管理ができていないという事態が生じることがあります。
 このような対応の漏れが生じないよう、従業員数の増加に伴って、労務管理においてどのような法律が適用され、会社はどのような対応が必要になるか、今回は、従業員数10人以上となった場合の労務面で対応すべき点を説明します。
従業員数が10人以上となった場合に労務面で対応すべきこと
 ・安全衛生推進者等の選任
 ・就業規則の作成・届出(罰則あり)
 ・法定労働時間の特例の非該当 ※一定の業種に限る
 ・男女別トイレの設置 ※従業員数が11人以上となった場合

 ※従業員数が50人以上となった場合は、別の法令が適用されます。

常時10人以上の労働者を使用する事業場とは

 労働安全衛生法上の「労働者」とは、職業の種類にかかわらず、事業または事業場に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。この「労働者」には、パート・アルバイト日雇労働者など臨時的な働き方をする者も含まれます。
 基本的には労働基準法の考え方と同じで、同居の親族のみを使用する事業や家事使用人は「労働者」に該当しません。
 
 また、原則同じ場所にあるものをひとつの事業場としますが、以下の場合は、事業場の単位に注意が必要です。
【例外1 同じ場所にある場合でも業務内容が大きく異なるとき】
それぞれを別の事業場とする。(営業部門と工場部門、本社と店舗など)

【例外2 場所が異なる場合でも事業規模が著しく小さく、事業に独立性がないとき】
直近上位にあたる事業場と一括してひとつの事業場とする。(出張所、支局など)

安全衛生推進者等の選任

 中小規模の事業場は、大企業と比べると労働災害の発生率が高い傾向があるため、職場環境に合わせた正しい安全衛生指導を行う必要があります。

 そのため常時使用する従業員が10人以上49人以下の事業場では、職場の安全衛生水準の向上を図る役割として、事業場に専属の衛生推進者、また一定の業種においては安全衛生推進者(以降、「安全衛生推進者等」とする)を選任しなければなりません。
 ただし、労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントなどから選任する場合は、専属である必要はありません。
参考:厚生労働省『安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。』



 選任すべき事由(事業場の常時使用する従業員が10人に達したときなど)が発生した日から14日以内に、安全衛生推進者等を選任します。その後、作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により、安全衛生推進者等の氏名を事業場内の関係労働者へ周知しなければなりません。

 安全管理者や衛生管理者と異なり、選任した旨を労働基準監督署長に報告する義務はなく、罰則もありませんが、衛生推進者の選任は法令で定められた義務のため、対象となった場合は必ず対応してください。

就業規則の作成・届出(罰則あり)

 就業規則とは、従業員の賃金や労働時間などの労働条件に関することや、職場内の規律などについて定めた職場における規則集です。
 就業規則を作成することで、労使間での誤解やトラブルを防止できるほか、スムーズな労務管理が実現できます。

 常時使用する従業員数10人以上となった事業場では、就業規則を作成し、過半数組合または従業員の過半数代表者からの意見書を添付したうえで、事業場を管轄する労働基準監督署長へ届出をしなければなりません。

 「常時使用する従業員数」には、パート・アルバイトも含まれており、雇用形態にかかわらず、事業場に所属している従業員が通常10人以上いる場合が作成対象です。
 そのため、繁忙期などの一時的に雇用している従業員は、常時使用する人数に含みません。

 作成基準は、企業単位ではなく事業場単位です。人数のカウントや手続の漏れがないように注意が必要です。


 また就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)、当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項 (相対的必要記載事項)および、任意的記載事項3つがあります。


 就業規則を作成し届出をした後は、従業員がいつでも閲覧できる状態にしておくことが必要です。
【就業規則の閲覧方法(例)】
 ・PDF化して社内の共有サーバーなどに保管し、いつでも見られる状態にしておく
 ・印刷して、見やすい場所へ掲示または事業所へ備え付ける
 ・印刷して、従業員へ配布する など

 作成や届出を怠った場合、30万円以下罰金が科せられるため、適切に手続を行ってください。

法定労働時間の特例の非該当

 労働基準法では、法定労働時間を「1日8時間1週40時間」と定めていますが、一定の業種で常時使用する従業員が1~9人の規模の事業場では、特例として法定労働時間を「1日8時間1週44時間」と定めています。これを特例措置対象事業場といいます。
【特例措置対象事業場】
 ・商業   :卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
 ・映画演劇業:映画の映写、演劇、その他興業の事業(映画の製作の事業を除く)
 ・保健衛生業:病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
 ・接客娯楽業:旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

 そのため、特例措置事業場で常時使用する従業員が10人以上となった場合、週の法定労働時間は原則の週40時間が適用されます。
 なお、事業場とは工場、支店、営業所などの個々の事業場を指すため、原則の法定労働時間もしくは特例措置が適用されるかは、個々の事業場で判断されます。
【例】A店舗:常時使用する従業員数 12人、 B店舗:常時使用する従業員数 8人の場合(いずれも理美容業)
 ・A店舗:常時使用する従業員数が10人以上のため、原則の法定労働時間(1日8時
      間、
1週40時間)を適用
 ・B店舗:常時使用する従業員数が9人以下のため、特例措置の法定労働時間(1日8
      時
間、1週44時間)を適用

 特例措置対象事業場から除外となった場合は、雇用契約書や就業規則などを見直し、適宜変更してください。

男女別トイレの設置

 事業場に設置するトイレの基準についても、法令できちんと定められています。
 現在、事業場の規模や業種にかかわらず、男性用女性用と区別したトイレを設けなければなりません。
 ただし、小規模な事業場では、建物の構造や配管の敷設状況などの理由により、男女別のトイレを設けることが困難な場合もあります。

 この現状を鑑み、2021年12月に法令等の改正により労働衛生基準が変更となり、事業場で同時に勤務する従業員が常時10人以内である場合は、男女共用の独立個室型のトイレを設置した場合に限り、例外的に男女別による設置は要しないものと定められました。
独立個室型のトイレ(例)

(出典):厚生労働省『ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました』

 そのため、事業場で同時に勤務する従業員が常時11人以上となる場合は、原則どおり男性用と女性用に区別したトイレを設置しなければなりません。
 設置を怠った場合は法違反となり、罰則が適用される可能性もあるため、将来的に人員を増加する可能性や事業場を変更する予定がある場合は、適切な環境に変更する必要があります。

おわりに

 働きやすい職場の基盤は、法令に基づいた労働環境によって築かれます。従業員が安心・安全に働ける環境を整備するために、事業場で常時雇用する従業員が増えれば、事業主が負うべき責務も増えます。また、法改正により今後対応すべき事項も増えることが予測されます。
 
 今回解説した4つの義務の中には罰則がある規定もあるため、「法律を知らなかった」では済まされないこともあります。

 従業員数が増加しても対応すべき事項をあらかじめ把握し、組織が円滑に機能するために、労務担当者は適切な手続を行い、正確な労務知識を理解しておくことが大切です。
 
社会保険労務士法人は、法改正に対応した労務相談就業規則の作成・改定、労使協定の締結、各種助成金の申請支援などを行っています。
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